魔女の城6



 
嫌な気配に満ちた巨大な建物
足を止めさせ、行く手を遮る様々な仕掛け
そこかしこに配置されたモンスターの姿
幾つもの厄介な出来事と辺りに満ちた雰囲気
代わり映えのない危険の連続に、疲労が増している
そろそろ休息が必要なのかもしれない
「そろそろ新しい展開って奴がほしいよな」
次の部屋へと続く扉の前、扉へと手をかけながらゼルが呟く
目の前にある扉は今までみたものよりも一回り大きく、“特別”を感じさせる重厚な作り
「それじゃあ、開けるぜ?」
ゼルの確認の言葉に、スコールとアーヴァインは部屋の中からの襲撃に備え死角となる部分に身を寄せ、ゼルへと頷き返す
何があってもすぐに避けられるようゼルが体制を整え、扉へと手をかける
ドアノブが回るかすかな音
一呼吸おいて勢いよくゼルが扉を開け放つ
部屋の中へとともされた灯り
中から感じる生き物の気配
何か居る!
「うわっ」
警告を発するよりも早く、ゼルの叫び声と同時に視界の中を棍らしきものが通過していく
思わず武器を手に飛び出したスコールの耳に
「アブねぇじゃねぇかよっ!」
「あれ、ゼル?」
ゼルの怒鳴り声とセルフィののんびりとした声が聞こえた

「この辺でちょっと休憩にしない?」
どうやらこの部屋が2つに分かれた道の合流地点だったらしい
再会し簡単な会話を交わした後のアーヴァインの提案に反対する者は無く、仕掛けやモンスターの有無などの調査を終えた部屋の中央で休憩することが決まった
薬の幾つかは持っては来ているが、身体に負った細かな傷の中に得に手当が必要になるほどひどいモノは無い
怪我の状況を素早く確認すると、スコールは荷物の中から、携帯食料を幾つかと、小さな道具箱を取り出す
今のうちに手入れをした方が良いな
食料を口へと運びながら、ガンブレードへと手をかける
始めの戦闘での分解のせいか、度重なる戦闘のためか、ガンブレードの接合部分が甘い感じがする
これから先いつ休憩がとれるかは分からない
もしかしたら、このまま休憩を取ることもできないまま“魔女”と対決する羽目になるかもしれない
スコールは取り出した道具を手元によせ、ガンブレードを分解し始めた

「おもしれぇ造りだな」
ばらされた部品を手にとりサイファーが呟く
「こいつはこいつで単独で使えるって訳か」
ガンブレードのグリップ部、今はただの銃となったその部分を手にし、サイファーが引き金を引く
辺りに響く銃声
壁の中へと消えた弾丸
「やっぱ、ガンブレードって2つに分かれたりしないよな?」
「そうなの!?」
「少なくとも俺のは分かれねぇな」
至近距離で聞こえる声に顔を上げたスコールに向けられた興味深そうな複数の視線
「………「どうせ2つの武器を組み合わせるなら、一つ一つ使えるようにしなきゃ嘘だろ」………だそうだ」
「なんだそりゅ?」
スコールは手を休めないまま、簡単な昔話を始める
自分専用の武器としてガンブレードを使ってみたいと言ったのはスコールで、ガンブレードがどういった武器で、どういった性能を持っていて、どんな使い方をするモノなのかという話をしていたのは複数の大人達、そしてその話を一緒に聴いていたのが………
「ガンブレードが、剣と銃の2つの武器に戻る訳じゃないって知った時の父さんの言葉」
こういったモノは普通元の使い方ができる上で、新しい使い方ができるのが当たり前だという言葉は、
「………そう言われて見ればその通りね」
キスティスが言ったのと同じように、あのときもそう言われればその通りだと誰もが納得してしまって、気が付けば後はいつも通り、“国”単位での新しいガンブレード作りが始まっていた
「それで出来上がったのがこれになる」
複雑なパーツの組み合わせ
それでいて簡単にできる分離、接合
そして、“ガンブレード”という1つの武器としての安定性と各パーツの安全性
エスタの技術を結集してできた傑作………らしい
もちろん元来のガンブレードと同じように複数のタイプが存在するが、エスタ製のそのどれもがコレと同じように剣と銃というように各部に分かれ使えるようになっている
話を続けながらスコールはガンブレードを手早く組み立てていく
静かに最後のパーツが組み合わされる
「ちょっと貸せ」
完成したガンブレードをサイファーが手に取る
勢いをつけて振り下ろされる刀身
辺りに響く銃声
空気をふるわせ振動する刃先
「………良くできてるじゃねーか」
スコールの手の中にガンブレードが戻された
 

 To be continued


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