魔女の城9



 
空間がゆがむ
セルフィが立つその場所から、異空間が口を開けていく
浸食していく異空間、自分たちが立っていたはずの建物が飲み込まれ、目の前に広がっていくのは宇宙
何かを感じたのか、モンスターが声を上げる
逃げ去ろうとでもいうように身を捩り羽根を動かす
あたりに広がった異空間の彼方に現れる小さな輝き、何者かの存在
「よしっいけぇーっ」
勢いのあるセルフィーの言葉に会わせてソレが近づいてくる
一気に距離を詰めたG.F.がモンスターへと襲いかかる
G.F.の攻撃にモンスターは逃げられないと悟ったのか、対抗するように攻撃に転じる
あたりを突き抜ける衝撃
スコールは衝撃から身を守り、武器を落とさないように握りしめる
唐突に、衝撃が消える
その代わりに感じたのがモンスターの崩れる音
激しくぶつかっていた相手が突如姿を消したため体勢を崩したらしい
「よし、行くぜっ」
絶好の機会を見逃すはずもなく一斉に放たれる攻撃の数々
なるべくモンスターの死角からの攻撃となるように、位置を変えながら攻撃を放つ
同じ箇所へと向けられた刃が、モンスターへ派手な傷を負わせる
身体の中からにじむように流れ出す体液
モンスターの抵抗が激しくなる
けれど………
「時間の問題」
誰かの言葉が耳に入る
モンスターが強い回復手段を持たない限り、そう遠くない未来に決着は付く
そして相手には回復の手段はきっと無い
回復出来るならばその手を使う機会は今までにも何度もあった
今までの課程が回復しなくても問題ないという状況にあったとはとても思えない
それならば、相手はその手段を持たないと言うことに結びつくはず
力が尽きて来たのか、モンスターの放つ魔法が止んだ
ガンブレードを構え右後方からモンスターへと一撃を放つ
ガンブレードの刃がモンスターの身体の中へと飲み込まれていく
弾力のある肉を断つ感触
押し戻そうとする力に、全身の力を込めて刃を押し込んでいく
痛みにあがる絶叫
抵抗するようにささやかな抵抗を見せる身体
もはや力が尽きているのか、その抵抗はわずかな振動にしかならない
少し離れた場所で、派手な血しぶきが上がる
続けざまに聞こえる銃声
誰かの気配を感じ、スコールはガンブレードの刃を勢いよく引き抜く
身体を離した直後に、スコールが傷つけたその場所へと鞭が飛ぶ
一瞬の間の後に起きる爆発
一度派手な動きを見せてモンスターが動きを止める
「倒したよな?」
確認するようなゼルの声に、構えていた武器をおろした

傍らにあるモンスターの死骸
“魔女”の部屋へと続くだろう扉をふさぐように居座るソレの近くで、スコール達は一時の休憩を取っていた
もちろん“魔女”の動きを警戒し、対策は取っている
彼等の中心に浮かぶ1匹のG.F.
よくわからないが、セルフィーの説明によれば攻撃から身を守るバリアを造ってくれるらしい
「後怪我は無い?」
どんな小さな怪我でも残しておいては危険だというキスティスの主張で、回復魔法が使われている
「大丈夫だけどよ、それよりアレどうやってどかすか考えた方が良いんじゃねーか?」
ゼルの視線の先にあるのは先ほどのモンスター
確かに扉を防がれた状態では扉を開く事が難しいが
「G.F.に動かして貰えばいいんだよ、そんな事より僕はどこまで体力が回復出来るかの方が重要だと思うよ」
確かに、ゼル以外はそれぞれに体力を消耗している
モンスターにあれほど手こずったのだから、このまま“魔女”に戦いを挑むのは無謀だ
「せめて、万全とは行かないまでもそれくらいまでには体力を回復したいけれど………」
回復の手段を持っていないのか?
彼等の会話を聞きながら、スコールは自分の荷物を引き寄せる
エスタでは基本的に魔法は使わない
その代わり、様々な効能を秘めた薬の開発が盛んに行われている
取り出したのは、小さな小瓶を人数分
「回復薬だ、有る程度の体力の回復が出来ると思う」
新開発の栄養剤
使用するのは初めてだが、きっと大丈夫だろう
………実験くらいはしてるはずだし
ほんの少し不安を感じながら、スコールは瓶の中身を一気に呷った
 

 To be continued


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