時の流れの中で



 
戦いが終わったことに安堵の声を上げる彼等の声が聞こえた
それとほぼ同時に、辺りの光景が歪む
目に映る光景が、すごい勢いで移り変わっていく
―――ばらばらに映し出される光景
圧縮されていた時間の数々が分解され、元へと戻っていく
「いけない、早く戻らないと」
全てが元の位置へと戻る前に自分たちが在るべき時間へと戻らなければ、二度と帰る事が出来なくなる
現れては消える時間の数々
過去も未来も全てがばらばらに目の前を過ぎっていく
しつこいほどに受けた忠告の言葉が思い出される
「帰ろう!」
声に従って、全員が動き出す
自分たちの“今”の時間へ
瞬きする程の僅かの間に現れる見知った光景
―――過去の自分の姿
ひとかたまりになっていた筈の彼等が1人、1人と離れていく
不意に足が止まる
―――声が聞こえた
通り過ぎていった時間の欠片から、呼び声が聞こえた
楽しげな声と懐かしい呼び声に、“彼”は過去の時間で立ち止まった

流れ出した時間の真ん中で、“魔女”が立ちつくしていた
辺りを通り過ぎる様々な時間
時の中に見える“魔女”の姿
時間の流れの中を1人の魔女がふらつく足取りで歩き去っていく
「大丈夫、彼女にはもはや力は残されていません」
魔女の姿を追いかけたスコールを“魔女”が遮る
「魔女に蓄積された力は貴方達の手により幾つにも分けられ、散っていきました、あのものに残ったのはほんの僅かな“力”だけ」
近づいてくる“魔女”からは嫌な感じはしない
先ほどまで対峙していた狂気に満ちたあの魔女とも、これまで関わり合った“魔女”に感じた圧迫感も感じない
感じるのは優しくて、そして哀しい―――
目の前に在るその姿は最後に視た“魔女”に似ている
けれど、あの魔女はつい先程どこかの時間へと紛れ込んでいってしまった
同じ人間ではない
直感に過ぎないけれど、それはきっと当たっているはずで………
「あなたは誰です?」
無意識に構えていたガンブレードを降ろし、スコールは彼女へと問いかける
僅かに伏せられる目
「私………私は“魔女”です」
凛とした声が耳を打つ
「私は貴方達が“魔女”と呼ぶ存在」
辺りを流れの時間の中の魔女達の視線が彼女へと注がれる
悲しみや憎しみ、諦めそして憧憬
「私が一番最初の魔女です」
様々な感情が彼女へと向けられた
 

 To be continued


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