英雄とテロリスト
(決着 SideL)


 
轟音をたてて、ヘリが墜落していった
ラグナは慌てて、屋上の端へと駆け寄った
墜落したヘリが炎上している
「……不幸中の幸いってとこかな?」
墜落した現場は、建物のない開けた土地
辺りに集まった人たちの様子からすると、怪我人もいない様だ
背後で男の悲鳴が上がった
なんだなんだ?
気絶してたんじゃなかったのか?
振り返ったラグナの目に男の側にいるスコールの姿が飛び込んできた
「なんだ、無理矢理起こしたのか?」
ラグナは奪い取ったライフルを手にゆっくりと近づいていく
……動けそうにもないけどな
銃弾が貫通した、左腕、そして、全身を強く打ち付けている
スコールみたいに着地したわけじゃないからな
両足、両腕、胴体……
ラグナは、素早く男の体を確認する
あれは、折れてるな
左腕があらぬ方向へ曲がっている
「スコール、あんまりいじめるなよ?」
ここまでお膳立てすればもう充分だ、通り掛かりの他国の人間が足を踏み込む領域じゃない
「………別に何もしていない」
スコールは、むっとしたような返事をした
男の口からくぐもったうめき声が漏れる
……結構根性座ってるみたいだな
近づきのぞき込んだラグナに殺意の籠もった視線をよこす
…………
ラグナは、無言でライフルを持ち上げると、その銃身を男の鳩尾に素早く落とした
「う゛っ」
うめき声と共に、男が再び気絶する
「………いいのか?」
スコールの静かな声
うん?何がだ?
………気絶させたことか?それとも顔をしっかり見られたことか?
顔はいまさらだ
「いつまでも相手にしているわけにはいかないからな」
ラグナは、男が気絶していることを確かめると、背を向け歩き出した
「さすがに政治問題に他国の人間が関与する訳にはいかない」
スコールが立ち上がり追ってくる気配がする
特に俺の場合はな………
国の問題に発展しちまうからなぁ?
「今の状況だって大差ない……」
でもないんだな
スコールの言葉にラグナは笑みを浮かべる
「巻き込まれた結果と、事を起こしに行くのでは全く違うさ」
だからこれ以上は関われない
「念をいれるなら、人がこない内にいなくなるのが一番かもしれないけどなぁ?」
「顔を見られてる」
……まーな、それにここでいなくなったら、犯行グループの一員って見方をされても文句はいえない
「ま、ようは穏便にすませば良いんだよ」
地上が騒がしい
集められていた人質が、無事建物の外へでる事ができた様だ
ラグナは背後に視線を走らせ、気絶したままである事を確認した
数人の人間が近づいてくる気配を感じる
……なんだ、言い訳する必要はないみたいだな
見知った気配が混じっている
きっと、うまい説明をしてくれたことだろう
ラグナは、足早にその気配の元へ近づいていった
 
 
 
 
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