英雄と遺産
(戦い)
振り下ろされるガンブレードをラグナは、剣で受け流す
「スコール!」
勢いを付けて振り下ろされるガンブレードの合間を縫って呼びかける声に答えは返らない
突き刺す程の殺意
殺すつもりで繰り出される攻撃は容赦が無い
「正気に戻れ!」
何者かに、操られたまま、ラグナの呼びかけにも、スコールが正気に返る様子はない
反動を付けて繰り出される攻撃をラグナは、寸前でよける
剣圧に体を運ばれるスコールの脇をすり抜け、体を入れ替えたところで、ラグナは立ち尽くす
まずいな……
構えた剣を振り下ろす事が出来ない
横殴りにガンブレードが繰り出される
剣をあわせ、ガンブレードを巻き込む様にして、振り払うが、その手から払い落とす事が出来ない
くそっ
相手の腕を折るならば、無理矢理武器を取り落とさせる事も出来る
まして、相手がどうなろうとも構わないのなら、今のスコールなら問題なく倒せている
怪我させる訳にもいかないしな……
薙ぎ払われる刃先を身をかがめて交わす
ここぞとばかりにガンブレードが頭上に降ろされる
反射的に腕を上げる
両手できつく握りしめた剣が衝撃を吸収する
跪いた、ラグナにとっては不利と言える体勢
もう一度攻撃をする為にスコールが微かにガンブレードを持ち上げる
あんまり自分の意志は残ってないんだろうな……
持ち上げたタイミングにあわせ、ガンブレードを押しのける
バランスが崩れる
……スコールが使ってるやつは結構重いからな……
だからこそ、両手を使い、体全体を使った攻撃をする
スコールが体勢を立て直す頃には、ラグナは距離をおき剣を構えている
本気の戦い
だが、操られているからだろうか?
思考が感じられない
攻撃は、ただ体に身に付いたそれを繰り出すのみ
助かったって言うべきなのかもな
本気のスコールを相手にこんな事をするのはきっと不可能だ
ラグナは、正面に両刃の剣を構える
どうすれば正気に返るんだろうな?
スコールの攻撃を避ける
普通ならば、振り下ろすはずの剣
せめて片刃にすれば良かったな……
気絶させる手段を見つけだせず、重いため息と共に剣を構える
状況は一変していた
周囲を取り囲んだ機械兵達
いつもならばさほどの苦労もせずに倒せたのだろうが……
一体を切り倒すと同時に、ラグナは体を入れ替えるようにして、スコールの攻撃を受け止める
なかなか排除する事が出来ないラグナ達に苛立ち敵が送り込んできた増援
スコールに向けられた攻撃をラグナは受け止める
直後に守った相手からの鋭い一撃
切っ先が体を掠める
近くの兵を蹴り倒した上で、足場にし宙へ舞う
蹴り倒された相手が、周囲の兵を巻き込んで倒れる
降下半ばに、剣を振るい、背後からスコールを狙った物を纏めて切り捨てる
同士討ちをいとわず攻撃をする兵士達
そして、何より問題なのは、機械兵は、スコールをも排除すべき敵と認識している事
機械兵の腕を叩き折り返す刃でスコールの一撃を受け止める
両腕の力を込めて、ガンブレードを跳ね上げる
怪我なんかさせたくないんだけどな………
身体を反転させるようにして、力まかせに抱き寄せる
ギリギリのタイミングで、棒状の兵器が通過する
俺のわがままだけどな、出来るなら怪我は………
触れた筋肉が動くのを感じ取り、ラグナは慌てて後方に飛び去る
容赦の無い攻撃
受け止めたラグナの足元が崩れる
しまった!
受け止めたはずの剣がガンブレードを滑らせ、勢いが鈍った刃が降りてくる
左腕に灼熱の痛みが走る
スコールが腕に力を込め、引き金を引く
抉られる感触
っ!!
押し殺した悲鳴と同時に、ラグナは無理矢理腕を引き抜く
辺りに血臭が漂いだす
「……まったく、ガンブレードの使い方位忘れてくれても良さそうなのにな」
今はまだ痛みよりも熱を感じる
やっぱり怪我させる事になっちまうな……
戦いに身を置く者ならば、怪我の1つや2つ気にもしないだろう
機械兵はその数を減らしている
実際、これがキロスや、ウォードならば、ラグナも躊躇う事なく多少の怪我を負わせる方を選ぶ
皮肉にもラグナが怪我を負ったことにより、スコールが攻撃の対象から外れた
ただのわがままだけどな……
複数の攻撃を交わしながら移動する
やるなら今、か……
厳重に守られている為近づく事ができない、施設のメイン頭脳を見やる
もう1人人手が欲しいな………
頭脳の周りには常に数体の機械兵が護衛についている
そして、自己防衛手段とも言うべき、銃口が2つ
………まぁいいさ、今が絶好の機会なんだしな………
覚悟を決め、ラグナは重心を落とし身構える
神経を集中させ、タイミングを計る
左腕を血が伝い落ちる
微かに左足を移動させる
体重を乗せ飛び出そうとしたその瞬間、左側にいた機械兵が両断された
!?
続けざまにラグナの目の前で機械兵が倒されて行く
「何やってんだ?」
立っていたのは機嫌の悪そうなサイファー
スコールが、振り返りざまサイファーに向けて一撃を放つ
綺麗にガンブレードが撃ち合わされる
「てめぇ、なんのつもりだ!?」
「敵に操られてんだ」
敵がサイファーに気を取られたその隙にラグナは、間をすり抜け、メイン頭脳へと迫る
「そっちは、頼む」
言葉と同時にラグナは、機械兵を無視し、渾身の一撃を振り下ろした
銃口から青いエネルギーが覗いた
振り下ろした剣がソレを真っ二つに切り裂く
二つに折れた剣先が宙に舞う
ふいに、腕を振り上げた機械兵がその動きを止めた
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