英雄と遺産
(復帰)


 
耳元で、大きな音がした
音?……怒鳴り声?
声の相手を窘める声がする
どちらも、聞き覚えのある声
『スコール……』
名前を呼ぶ声
そして、ものすごい破壊音が響いた

破壊音に促される形で、スコールの意識は覚醒した
覚醒と同時に反射的に身体が動く
ガンブレードを握り、飛び起き、音の方向に向かって構える
「………スコール?」
背後で、とまどったような声が聞こえる
スコールの視線の先には、巨大とも言える大きさの機械が現れていた
動きを止めた機械から、微かな振動が伝わってくる
エネルギーを充填する様な、そんな気配
鋼鉄の奥に微かな光
スコールは、それを認識すると同時に攻撃を仕掛けていた
助走をつけ、遠心力と、体重を乗せた一撃を機械の関節部分へとたたき込む
壊れた金属板が、小さく光っていた銃口を隠す
背後で鋭い舌打ちが聞こえた
2人分の気配
2人分?
もろくなった箇所へとスコールはもう一度ガンブレードをたたき込む
中身を破壊しながら突き刺さるこのまま抜くのは難しい、が
スコールはガンブレードの引き金を引いた
後ろの気配がもめている様な感じがする
弾が当たる振動で、刃先が機械をえぐる
魔法が発動した
スコールは、後ろへと飛び退く
機械が火を吹き上げる

スコールが背後を振り返ると同時に
サイファーがウォータの魔法を掛けた
サイファー?
2人目の見知った気配の正体に気づきスコールは内心首を傾げる
炎上していた、炎が消える
崩れた機械が僅かに動く
そして、粉々に崩れた

「先に戻ってろ」
近くの壁に貼ってあった地図を剥がしてラグナがそう言った
「……今度は何をするつもりだ?」
少し先を歩いていたサイファーが足を止めた
何か言いたそうな顔をしてこちらを見ているが、今は何も言わない
「後始末」
きっぱり言い切って、ラグナが再び奥へと戻っていく
後始末?
この建物の中には、見て回った限り何も無かった
だが、簡単に命を落とす事ができる程危険な物は山の様にある
施設破壊
「道に迷うな」
了承した印にスコールはラグナに声を掛ける
「大丈夫だって」
ラグナが振り向かずに手を振った
本当に大丈夫だろうな?
スコールの頭を微かに疑問が掠める
……きっと、どうにかするだろう……
とりあえずそう結論付け、スコールは、サイファーの視線を感じながら、建物を後にした
 
 
 
 

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