英雄と遺産
(破壊)


 
動作停止……
命令が伝わってくる
数十分ほど前に、施設の防衛システムが破壊された
始めはシステムを破壊した相手が、この場所に乗り込んでくるかと思い、恐れを抱いていた
私に伝えられたのは、すべてのシステムの停止
……それは、私という存在が消えてしまう事を意味している
与えられた命令を実行に移さなければならないのに、私は尚も躊躇っている
再び命令が伝えられた
施設の停止、及び私自身の半永久的休止
……休止
伝えられた命令を私はもう一度確認する
停止ではなく休止
それならば、私が消えてしまう事はない
続けて命令が伝えられる
本施設の厳重な封鎖、そして上部施設の爆破
なぜ?
私は疑問を返す
本来ならば、疑問を発するなどと言うことは許されない行為ではあるけれど、不思議に今はそれが許される様な気がしていた
答えが返って来るまで時間が掛かった
今という時代には、君達の登場は早すぎる。だが、そう遠くない将来、君の元へ人々が自力でたどりつくことができる様になれば…………
私は答えを聞いて嬉しくなった
私が休止するのは、遠くない未来に人々の役に立つため
長い間忘れられていたこの施設は、今は本来の目的で使える人間がいないという
滅びる訳ではないのなら……
ほんの少しの間隠れているだけなら、言うとおりにしても良いのかもしれない……
私が前回受け取った命令は、どれだけ前だっただろう?
私は、命令を受け入れる事を伝える
長い間ただ1人で待つよりも、眠っていた方が寂しくないから
私は施設のすべての動作を停止させる
そして、施設すべてを厳重に封鎖、外部から隔離する
続けて、上部施設の爆破命令
命令を確認して、通信が途切れる
私は、小さな好奇心に駆られて命令者の姿を探した
荒い画像が私の脳裏に浮かび上がる
印象深い眼差し
音の無い映像を見つめながら、私は私に休息を命じる
誰かが私を起こしてくれるその日を楽しみにして
私の意識は不意に途切れた
 
 
 
 
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