英雄と遺産
(ボーナス1)


 
「近くで見ると結構小さいんだな」
俺達は首尾良く、潜水艇の近くへと移動して来ていた
何、当たり前な事を言ってやがる
「おめでたいやつだな」
思わず口をついた言葉はゼルには聞こえなかったらしい
「おい、俺が合図したら、お前は潜水艇を占拠しろ」
サイファーは、無造作に足を踏み出す
「おう、任せておけっ」
ゼルが潜水艇の入り口へと走り出す
失敗なんかするんじゃねーぞ
久しぶりの戦い
サイファーは、口元に意地の悪い笑みを浮かべる
右手に持ったガンブレードを空へと向ける
見張りらしき男と目が合う
おせーんだよ
仲間に知らせようとするその様子を見ながら、サイファーは引き金を引いた
辺りに銃声が響き渡る
視界の隅で、ゼルが中へ踊り込むのが見える
色めきたち武器を手にする海賊達の背後からスコールが現れる
慌てる海賊達を尻目にサイファーは背を向け堂々と歩き出す
1人、海賊が背後から近づいてくる
背を向け、歩きながら、ガンブレードが振るわれる
悲鳴が上がる
「相手してやる暇がねーんだよ」
嘯いた言葉を残し、サイファーは悠然と歩み去る

「派手にやってんじゃねーか」
目の前を男が蹴り飛ばされて来る
ふらつきながら立ち上った男にサイファーは蹴りを入れ気絶させる
「なんだ遅かったな、あらかた片付いたぜ?」
追いつめた海賊を相手にするゼルの姿
「みてーだな」
右手に下げ持っていたガンブレードをサイファーは担ぎ上げる
「あんたなら、嬉々として倒しに来ると思ってたぜ」
ゼルの拳で最後の男が崩れ落ちる
「ガンブレードで戦えってか?」
馬鹿にしたようにサイファーはゼルを見る
「……なんだよ…」
起き上がろうとする男をサイファーは踏み潰した
「狭い場所で使うには向いてないだろうが」
ゼルを押しのけサイファーは、操縦席へと向かう
「……なぁ、だったら、人選ミスなんじゃないのか?」
ああ?なんだって?
「だってよ、狭いところで不利だってんなら、他に………」
「他になんだって?」
サイファーは、ゼルを睨み付ける
「いい、解った………適任者っていないんだな……」
そういうことだ
「でも、サイファーよく引き受けたな」
何が、だ?
サイファーは呆れた目を向け、操縦席へと向き直る
電源の入った機械は、これが直ぐにでも発進できる事を示している
「だってよ、戦えないって解ってんだろ?する事ないじゃないか」
サイファーは、電源を切った
「他にやることがちゃんとあんだよ」
ラグナさんから直々に頼まれた仕事がな…
「なんだよ、それ?」
サイファーはゼルの問いかけに答えず、ガンブレードをコンソールパネルへと振り下ろした
ガンブレードが突き刺さり火花が飛び散る
「なにすんだ!?」
もう一度振り下ろそうとした腕が捕まえられる
「俺は言われた事をやるだけだぜ?」
掴んだ手を振り払いサイファーは徹底的に破壊する
「いつそんな事言ったっていうんだよ」
頭を抱えたゼルの情けない声
「さっきにきまってんだろ?」
会議が終った後、呼び止められ、潜水艇を二度と使えなくするよう徹底的な破壊命令を受けた
最後の仕上げ用に爆弾まで貰ったしな
「なんで破壊なんかするんだよ?」
操縦席には機械の残骸が散乱している
「それ位自分で考えたらどうだ?たまには頭も使ってやらねーとますます悪くなるぜ?」
考えてもわかんねーだろうけどな
サイファーの皮肉にゼルが抗議の声を上げている
抗議の声を奇麗に無視して、サイファーは渡された時限爆弾を取り出した
爆弾を目にしたゼルの顔が引き攣る
いちいち反応してんじゃねぇ
「そいつら連れて避難しとけ」
倒れている男達を顎で示す
「避難しろって……サイファー!」
動力部に向け歩き出すサイファーの背中にゼルの声が響く
「1人も死なすなって命令だ、速やかに遂行するんだな」
振返らずに手を振るサイファーの背中にゼルの罵声が聞こえた
 

 
 
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