英雄と泥棒
(報告)


 
「調査報告が届いたんだけどさ」
事件から数日後、ラグナは、スコールを恐る恐る呼び出した
不機嫌そうに、手を伸ばすスコールに、女性の素性、そして、男達の素性が書き込まれた報告書を渡す
しばらく紙をめくる音が室内に響いた
「…………泥棒?」
「単純に言えばそうなるみたいだな」
スコールは、呆れた様な目をしている
ただの泥棒とも、違うみたいなんだけどな
グループの方は、注文を受けた物を盗み出す窃盗団みたいだしな
盗んででも手にいれたい、か
そういう気持ちは解らなくもないんだけどな
「盗品と解っていて手に入れた場合は罪になるんじゃないか?」
「その通りなんだけどな」
見つからない場所にこっそり保管しておくことはそう難しくもないしな……
「盗もうとしたのは、乗り物だろう?」
理解しがたいという顔でスコールが報告書をめくる
まぁ、そうなんだけどな……
どう言って良いものか、的確な言葉が見つけられずラグナは、空中を見つめる
「ま、そっちの方は対して問題じゃないんだけどな」
多少、他の国の内部でもめそうだけどな
きっと犯罪を依頼した人々が、それなりの罪に問われる
その辺はエスタ国内には関係がない
「元ガルバディア兵?」
「本人が言うにはそういう事みたいだな」
事実関係の確認はこれからだけどな
「ガルバディアが関わっている可能性は?」
淡々とした口調の質問
「本人は関係無いって言ってるけどな」
ガルバディアの手を借りてるのは確かだ
本人の自覚のあるなしってのはこの際関係ないからな
上手く行ったならば、帰ってきたところで捕まえれば、ガルバディアは自分の手を汚す事なく、戦利品と簡単なデーターを手に入れる事ができる
失敗したところで、関係ないと切り捨ててしまえば済む
裏が無ければ、簡単に情報を漏らしたりしない
特に出来たばかりの機密なんてのは、な
「情報の出所が問題だな、簡単に漏らす様な奴なのか」
目でどうなんだ?と問いかけてくる
……って聞かれても
「ガルバディア軍の人間全員をどうやって知れって?」
「こんな情報を持っているのは、上層部だ」
…………ソレこそ、盗み出したのかもしれねーぞ?
「内緒って事にしないか?」
突き刺さる様な視線
長い沈黙の後
「………解った」
スコールはそう言った
国家には機密という物が存在する
………本当に知らないとか言ったら、殺されそうだな
報告書を丹念に見るスコールを見て、ラグナは小さくため息をついた
 
 
 
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