英雄と夢想家
(声明)
ほんの少しの緊張
長い間待ち望んだこの時を迎えて
私達は、極度の緊張に包まれていた
「…成功したようです」
歓喜に震えた声が告げる
一瞬の静寂
そして、歓声が上がる
「そう、エスタに向けた攻撃は命中したのね」
自分でも不思議な程冷静な声
私の声に即座に反応して、エスタの様子が映し出される
煙を上げ、崩れ落ちた建物
燃えさかる赤い炎
見る影もなく崩れ落ちたエスタの街が其処にはあった
私の口元に満足げな笑みが浮かぶ
心の底から満たされた気持ちになったから
………きっと、笑みが浮かんだ
「それでバラムガーデンの方は………」
奇妙な表情をした、同志の姿
そう、そちらはダメだったのね?
さすがはSeeD達というべきなのかしら?
それともそれほどの技術を残した方々を褒め称えるべきなのかしら?
私の心は一瞬で決まった
「仕方ないわ、それだけの設備を持って居るんですもの」
「確かに、その通りだ」
人々の声が唱和する
そして私達は、世界へ向けメッセージを発信する
映像が荒れ、不鮮明な女性の姿が映し出される
テレビを見ていた人々は、突然の出来事に眉を潜め
鮮明な映像を取り戻そうと手を伸ばす
「私達はセントラの民」
雑音混じりの声が大きく響く
「あなた方は愚かな人々の末裔、私達を裏切り見捨てた卑怯な者達」
不愉快なノイズに紛れた声は、不思議に耳に優しい
「罰を受ける時間が来たのよ」
不気味なほど穏やかな表情
「セントラのすべてを奪い去ったエスタは罰を受けたわ」
柔らかな声音が告げる言葉が、理解されるよりも早く、エスタの惨状が映し出される
作り物めいた映像
画面を見つめていた幾人かの脳裏にそんな言葉が思い浮かぶ
「さあ、私達から盗み出した物を返しなさい」
「セントラの遺産を、総て差し出しなさい」
ノイズに紛れていたはずの声が突如鮮明に、凛と響き渡る
印象的な声と笑みを残し、映像はとぎれた
心地よい達成感
私は上手くやれたかしら?
そっと、周囲へ視線を走らせる
満足そうな人々の笑みに私はようやく安堵する
「……これから忙しくなるわね」
上手く行った事が判ったから、私はすぐに気持ちを切り替える
私の仕事では無いけれど、これから重要な仕事が残っている
――各国との交渉
「忙しいなんて言ってられませんよ」
交渉を任せられている彼は、晴れやかに笑った
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