英雄と魔法生物
(嵐)


 
晴れ渡った空と穏やかな海
絶好の航海日和だった
つい、先ほどまでは
あれほど穏やかだった海は突如として様子を変えた
波は荒れ狂い、空からは大粒の雨、そして雷
四方から押し寄せる波に船がくるくると弄ばれている
荒れ狂った海の上であちこちから男達の怒鳴り声が聞こえる
船員達は皆必死で船を立て直そうとしている
荒れ狂う高波は、容赦なく船へと海水をまき散らす
激しく揺れる船と、溜まっていく水
―――この船は持たないかも知れない
脳裏に浮かぶ言葉を必死で否定しながら彼等は努力を続けていた

そして、数時間後
ぼろぼろに傷ついた一隻の船が港へと寄港した
遠く海岸線の先までも見透かせそうな快晴の日に、まるで嵐の中を通り抜けてきたような姿に港の人々は一様に首をひねった
そして奇妙な噂が流れ始め、さほど時間を置かない内に事件が起きた

  

 
ラグナサイドへ スコールサイドへ