英雄と少年
(はじまり)


 
泣き声が聞こえた
悲しそうな声が聞こえた
弱くか細い声は呼んでいるんだとそう思った
だから
探して
探して
「こんな所にいたんだ」
隙間に隠れるように蹲っていた小さな身体に触れる
脅えたように震える身体
「大丈夫、大丈夫だよ」
声をかけながら手を伸ばす
「うっ」
手にびりっとした痛みが走る
「怖くないから」
痛みをこらえて無理に作った笑顔
警戒したように見つめる目
震えそうになる手を押さえながらもう一度身体に触れる
離れようとする身体
そのまま動かないで
大丈夫、怖くない
必死で言い聞かせる言葉を繰り返して
手に触れた温もり
「………一緒に行こう」
暖かな温もりが頷いた気がした
 
 

  

 
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