英雄と少年
(参戦 SideS)


 
報告が届く
一つはセルフィ達から
村に住む子供がいなくなった
もう一つは風神から
周辺で、遭遇したという人物
最後にキスティス
他の場所からはモンスターが出現したという情報は無い
行方不明になったという子供は、村の大人が村の外へと出かける姿を見ていたらしい
何故止めなかったのか
セルフィたちは勿論、他の村人にも言われたらしいが
“いつものこと”
だと思ったのだという
モンスターが出るという状況での“いつものこと”
村の外へと出る事が危険だとは思わなかったのか?
問いかけには戸惑ったような視線
それがいつもの事だったから
何の問題も起きてはいなかった
彼だけではなく、村人達が言ったという言葉
それらはいなくなった子供の両親も含まれていた
怒りをあらわにしながらのゼルの報告
おかしいんじゃないかっ
という言葉には頷くしかない
だが、それが当たり前になったのはいつからだ?
「でも彼等、気になることを言ってたんだよね」
そう言って告げた言葉
“モンスターが子供を襲うはずがない”
モンスターが子供を襲わない訳がない
むしろ大人よりも弱い子供は襲われやすい
それが世間の“常識”
モンスターが子供を襲うはずがないというのなら、それなりの根拠が必要だ
あの地域でのモンスターの被害
データベース化した情報へアクセスする
他の地域とさほど違いは無い
それなら年齢別は?
“子供”は襲われない
対象者を“子供”に絞り込む
数値上は大した違いは無い
ただの言い訳だったのか?
自分達の行動を正当化する為の言い訳
だが、そうとは言い切れない
言い訳をするにしてももっと別の言い訳がある筈
モンスターが子供を襲わないなどという言葉を信じる筈が無い
「それも、調べる必要がある」
そんなモンスターが存在しているのかどうか
過去に、そんな状況が起きたのかどうか
あの付近の事も調べる必要がある
一度、行くか
風神が告げた言葉も気になる
風神と同じ様に村の周囲を歩く人物
何かを探っている様だったという言葉
実際に何かを調査しているらしいとは、セルフィに確認して得た情報だ
問題は、何を調べているのか
そして“何処”から来た人物なのか
風神と鉢合わせた事が何度かあると言う事実と風神からの報告に寄れば
相手が調べているのも“モンスター”について
彼が、ガーデンの人間ではない事は確かだ
村人と接触する事も少ない事から、バラム政府の人間でもないだろう
その他にこういった事に手を出してくる所
………………
スコールはひっそりとため息を吐く
対象となる組織は複数ある
それでも一番に思い浮かんだのは―――
もう一度ため息が零れる
一度思いついた事は、消えない所か次々と浮かんでくる
椅子に寄りかかって目を閉じる
可能性は充分ある
今までの事を思えば、きっと本人も参加するんだろう

スコールは無言で立ち上がり、扉へと向かう
「何処へ行くの?」
キスティスの言葉に足を止める
「………買い物」
とっさに呟いた言葉に、キスティスが呆れた様な視線を向ける
「………ま、いいわなるべく早く戻ってきてね」
「善処する」
キスティスの言葉に応えると同時に扉を閉じた
 

 
 
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