(隠れ家)
「誰だ?」 扉を開いた途端に聞こえた声 大人の声に動きが止まる 近づいてくる足音 逃げようって思ったのに、足が動かない 人の顔が覗く 「………誰?」 見たことのない人 お互いにじっと顔を見つめる 「どこから迷い込んだ?」 ため息と共に言われたけれど 「………わからない」 目が覚めたらここにいたから 一緒に居たはずの友達の姿だってどこにも無い 思い出して、泣きそうになる 「――――――」 小さな声でなにか言う 怖い顔をしたから、自然に身体がビクッとする 「………ここは子供が来る場所じゃない、外まで送ってやるから帰るんだ」 手が伸ばされる けれど 手を繋ぐのは怖くてじっと手を見つめる 「まあ、いい」 向けられていた手が引っ込められる 背中が向けられる 「出口まで行くぞ、着いて来い」 そういって。、振り返ることなく歩いていく しばらくの間、遠くなっていく背中を見つめて 何となく後ろを振り返る 見えるのは、ずっとまっすぐな廊下 何も見えない 誰も居ない 前を歩いていく背中が遠くなっている 遠くなっていく大人の背中を慌てて追いかけた 扉の並ぶ廊下を抜けて、大きな扉の前にたどり着く
幾つかの影が遠ざかる背中を見送る様に立っていた
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