英雄と少年
(建物)


 
森で出会った子供を村へと連れて行く過程で聞いた情報は
森の奥に何らかの施設が在る
ということ
怖がる子供を宥めすかして話を聞き出し把握した現状は、予想内の出来事と予想外の出来事が入り交じっている
スコールが呼び出したゼルへと子供を預け
森の入り口へと移動する
「どう思う?」
どちらからともなく口にした問いかけ
一緒にいた筈だという子供達の行方―――正体―――も気になるが
問題なのは扉の中から外へと案内したという大人の存在
子供はそれ以外の人の姿を見なかったと言うが、森の中に存在する施設の中に少なくとも一人の人が居る事は確かだ
そこが何をやっているところなのかは知らないが、人が居るということは使われている可能性が高いということ
何処の―――誰の―――持ち物で何をしているのか知らない以上、不用意に近づく事は危険
「何処の施設だろうな」
ラグナの呟きに、スコールが左右に首を振る
バラム国内に在るのだから、バラムの施設
普通ならそう考える
現在人が常駐しているというのなら、余計にその可能性は大きい
―――それが本当に人だというならば
「バラムには、“軍”関連の施設はない」
「そういう話だな」
“軍”に関する業務は、ガーデンが代わりに請け負っている
他国にも知れ渡っているバラムの常識
「軍の施設では無いかもしれないからな」
科学施設
研究施設
国が運営する施設には様々なものがあるはずだ
その中の一つという可能性もある
最も、近隣の村人がその存在を知らない施設なんてのは、それだけで不穏だ
「………モンスターは、そいつ等が倒したのかも知れない」
SeeDが派遣された途端、村へと現れなくなったモンスター
あるいは、モンスターはそいつ等が放したのかもしれない
「可能性はあるかもしれないな」
もう少し詳しい情報が集まらなければ、結論は勿論推測も出せない
「“友達”のことも気になる」
一緒に遊んでいたという友人
村で行方不明になっていた子供の数は一人
子供の足で移動出来る距離に他の村は無く
近くに数件在る孤立した家々にも子供は居ない
どちらからともなく森の奥へと視線を向ける
「………捜索範囲を森に広げる」
村人の知らない情報
依頼されたのはモンスター退治
モンスターの住処を探すのは仕事の内の一つ
「気をつけろよ」
静まり返った森の中からは生き物の気配は感じられなかった
 

 

 
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