英雄と少年
(遭遇)


 
「………スコールか」
開いた扉に構えていた武器を下ろす
スコールの視線が手の中の武器へと向けられている
一風変わった形状の武器を懐へと仕舞い込みスコールの背後へと目を向ける
「居たか?」
問いかけの言葉は簡潔だ
「いや、もう何もいない」
「そうか………」
スコールの答えも簡潔だ
ここにいたはずのモンスターも人もすでに姿を消した
どうやらスコールは彼等とは会ってはいない
「一足遅かったってことか」
ラグナはスコールへ室内の様子が見えるよう脇に退く
違うのは部屋の大きさぐらいなもので扉の向こう側と大差の無い様子
村から盗まれた道具と古い機械が混在して置いてあるのも同じだ
室内の様子を覗き見たスコールが、ラグナへもう一方の様子を見せるように身体を動かす
同じように部屋の中を覗き込み
………って、中の様子が良く見えないな
部屋の中へと足を踏み入れる
足を踏み入れた場所で足を止めじっくりと辺りを見渡す
向かい側に見える扉
「あそこから来たのか?」
「………そうだ」
あの扉の先には行かなかったが
「あっちも壊れてるのか?」
向こう側だけが無事だということは考えにくいよな
「………そっち側もか」
スコールの言葉に扉の向こうへと視線を向ける
ゆっくりと息を吐き出す
改めて室内へと視線を向ける
片隅に置かれた機械と道具
ゆっくりとその場所へと足を運ぶ
確かめるように道具に手を触れる
「………ま、悪いことにはならないだろうさ」
ラグナの言葉にスコールが躊躇いながらも頷いた

扉の向こう側にラグナが居た
唖然としたようにこちらを見
すぐに何時も通りの様子を見せる
扉の中はさっきよりも小さな部屋
だが先ほどの部屋と同じように生活の後が残り
部屋の中に見覚えの在る道具と古い機械が置かれている
さっきの部屋と同じようにこの部屋も使っていたんだろう
扉から身体を離す
開いた扉からラグナが中を覗き込み、足を踏み入れる
「あっちも壊れているのか?」
ラグナの言葉で、向こう側も破壊されていることを知る
「………そっち側もか」
何時、誰が行った行為なのかはわからない
ここまで破壊される何かがあったのかどうか、今となっては知る由もない
………もしかしたら、あのモンスターが実験の成果だったのかも知れない
スコールは嘗て見たモンスターの製造工場を思い出す
そうか、ここがあそこと関係がある可能性もあるな
「………ま、悪いことにはならないだろうさ」
少なくともモンスター達は人に危害を加える気はなさそうに思える
ラグナの言葉にスコールは躊躇いつつも頷く
「………モンスターが生きている可能性があることは伝える」
今回人を襲わなかったからといって、モンスターが永遠に安全とは限らない
ここに居た“人”がモンスターを操っているのならば、次の時には人を襲わせる命令を出す可能性もある
スコールは確認する様に辺りを見つめ、古びた機械を手に取る
一つのスイッチを押すと細かな振動と共に機械が動き出す
「何処かで同じ事が起きる可能性もあるからな」
ラグナの言葉が聞こえたのと同時に、手の中の機械が音を立てて止まった
 

 

 
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