(引っ越し)
一歩森の中へと足を踏み出す 足の裏に感じる柔らかな感触 じっと見上げる視線に気付いて手を伸ばす 「これで良かったんだ」 あの場所が壊されて誰もいなくなったのはずっと昔 それから長い間あの場所に彼等と居た 戻ってくるはずの彼等はどれほど待っても戻っては来ない 誰も入れてはいけない ずっと昔、誰かが言った言葉 それを守ってきたけれど……… 誰も来なくなってからも随分長い時間が経った あまりにも長い時間が経ちすぎて いろんなものが壊れた 外に出てはいけない そう言った人は随分前に居なくなっていたけれど 外に出る代わりに彼等へと頼み事をした この場所のことを思い出すかもしれない 誰かが戻ってくるかもしれない 期待は叶い 期待は裏切られた 忘れられた場所
もうすぐ森を抜ける
森を抜けた場所で見たこともないものが待っていた
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