(静観 SideL)
手元に有る情報を見比べる 蓄積された情報 分析した情報 予測される情報 こっそりを入手した“塔”の素材 様々な角度から分析された結果 判明した年代は遥か昔 私達に関連する者が残したものではないという事実 それは、“あの場所”と関係がありそうだということ ならば、あの場所が動いた条件は? そして中途半端に止まってしまって理由は? あの場所が今になって動き出した理由 それは起動するための条件が働いたため そして起動が途中でとまった理由 幾つかの理由は考えられるが、駆動音も何も感じ取れないとなれば、最も考えられるのは故障 けれど、それは単なる想像に過ぎない あの場所には近づくべきではない けれど、あの場所が動いた条件は、私達の益となる情報のはず フィーニャは考えた末に、“彼”へと接触した 「あなたの持つソレを見せていただいてもよろしいですか?」 彼が持つ古い衣装のペンダントに目を向けたのはただの偶然 けれど、ソレが何らかの機械である事を見てとれたのは偶然ではなく実力 「これですか?」 「ええ、古いものの様ですが………」 戸惑う彼に、いかにもそう言った装飾品に興味があるといった振りをする 私が女性型であるから、このような話題を持ち出すことに違和感はないはずです 戸惑いつつも、彼がそれを手渡し、母親から譲られたものだと語る 「セントラ時代のものだと言われても納得するほど随分古いものみたいですけれど、古い家なのかしら?」 「いえ、いわれなどは聞いてはいないのですが………」 どこか誇らしげな返事 これが一つ目の“鍵” 彼がこの地に所属すると同時に義務として受けた様々な検査 結果に記述されていた幾つかの項目 「そういえば、あなたの家族はあなたが“エスタ”に来ることに反対派しなかったの?」 他国、それも数年前まで敵だった所に来るなんて、大変だったんじゃない? もっともらしい事を言いながら、彼から情報を引き出す 「いえ、そんな事はまったく無いですよ」 慌てたように母親は大喜びだったという彼の様子には嘘は見当たらない 「そう、なら良かったわ」 これが真実、彼は―――彼等は自分達が何者であるのか忘れたということ 私はそれから差しさわりのない話を続けて彼と分かれた 彼の背中をさりげなく見送り、私は研究室とは逆方向へと足を向ける ネットワークから情報を引き出し、望む相手が何処に居るのかを問い合わせる あの場所の事、これからの事 私の報告を聞いて、どんな結論を出すのかは解らない それはもしかしたら、誰も望まない結論になるかもしれないけれど、私には報告をする義務がある すれ違う職員達と挨拶を交わし、私は執務室へと足を踏み入れた |