英雄と敵
(傍観 SideS)


 
以前終わった任務
ガルバディアに出現した“塔”の調査
SeeDに依頼された内容は調査とは言えない代物
依頼を達成後、押し寄せていた学者達が本格的な調査を進めると思っていたが、その調査は遅々として進んでいない
塔自体には問題なく近づくことが出来ているが
地中に埋もれた塔はその入り口を表してはいない
地上部分には中に入るための入り口となるものが何一つ無く
内部を調べることが出来てはいない
それならば外から調べられることもあるだろうと思うが………
何の情報も出てこないところをみると、調べても何も出てこないか調べられてはいないということ
あの場所が、古いだけの“塔”だという可能性は無い
土に埋もれ山と形を変えていた
それだけならば、ただの“塔”だという可能性は有りえたのかも知れない
だが、塔が出現した際のあの様子は、何かの力が動いている
今まで目にした遺跡の数々
今の技術では真似の出来ない仕掛けの数々
塔が現れた際の様々な現象
あれらは、まさしく古い―――セントラ時代の技術のはず
自分ではなくとも、幾つかの現象に触れたことのあるものならすぐに気がつくはずだ
それなら、それだからこそ
なぜ、エスタは動かない?
場所がガルバディアだから
そんな言い訳はいままでの行動を見れば通用しない
あいつは、興味があればどこにだって顔を突っ込む
そして、無理な行動をする背景には“セントラ”が関係していることが多い
あれは、セントラ時代のもので間違いないはずだ
だから、きっとそう遅くなくエスタが何らかの手段であの場所を調査すると思っていた
だが、これだけの時間がたってもエスタの姿が見えない
「興味が無いのか?」
それとも、セントラ時代のものだと思ったのは勘違いなのか?
………いや、それは無い
塔が現れる前の山は昔から存在いていたものだ
その中に存在していた塔が新しいものであるはずが無い
それともセントラ時代以前のものなのか?
その可能性は有りそうだ
だが、それをどうやって見分けたんだ?
指先が強く机を叩く
それとも、エスタの人間がすでに侵入していた?
当然のことだが、エスタの人間をすべて知っている訳じゃない
エスタの人間の中にも情報を専門にしている者もいるだろう
―――いない方が不自然だ
そいつらが、先に塔の調査をして報告をしたのか?
可能性はある
村に集まっていた学者や研究者
その大半は“自称”だ
その中の一人が偽者でも、なんら不思議は無い
誰がそうだったのか、なんてことは意味が無い
情報を集めるべきか?
エスタが何を探り、何を求めているのか
………違うな
知りたいのは、ラグナが何を考えているのかだ
「行ってみるか?」
エスタに?
聞いたところできっと誤魔化されるだろう
それに関係が無い
スコールはごまかすように言葉を重ね、じっと宙を見つめていた
 
 
次へ その頃のラグナ