英雄と敵
(決意 SideL)
「結果をお持ちしました」
その言葉と共にデスクの上に置かれた書類
「なんのだ?」
常と変わらない様子のフィーニャに問いかける
「“塔”の結果です」
“塔”の言葉にずいぶん前にガルバディアの地に出現した建造物のことを思い出す
「ああ、あそこの結果が出たのか」
予測は通信施設
なぜ稼動したのか、なぜ動きを止めたのかが不明
色々と気にはなるが、危険性は低かった
初めは報告を受けていたが、そのうち報告も無くなったんだよなぁ
大した情報はなかったんだろうな
そう思いつつラグナは資料を手にする
書き記された調査結果
残されていたデータの調査結果
「………あいつのお陰か」
ガルバディア出身の研究者
遺産の持ち主
意味を忘れてしまった末裔
「知らずとも機械は従うってことか」
彼が己が従うべき主だという認識した機械は、知らずに発せられる彼の命令に積極的に答えている
「それが私達の存在意義です」
微かな笑みを浮かべてフィーニャが佇んでいる
フィーニャの本体も遥か昔の機械だ
“塔”に設置されている機械とは違い自ら思考することはできるが、ヒトの命令に従って動いている
命じられた内容を精査し従うかどうかの判断もできるようだが、それでも命令には従うように出来ている
「まぁ、使える力があるなら使わせてもらわないとな」
「ええ、その通りです」
まとめられた報告へ改めて目を通す
起動のきっかけとなった信号
記された発信場所は例の遺跡、時期は………
「ちょうど居合わせた時だな」
そういえばあのときは遺跡が動いたな
鍵は“彼”それと自分達だろう
そして通信の発信先は
「月、か」
月へ向けられて発信されたのは警告
月から送られた信号を受け取り、“塔”が姿を現した
出現が中途半端に終わったのは、月と繋がっていた通信が切れたからのようだ
「なぜ切れたんだろうな」
途中で切れた通信
別に返事を期待していた訳じゃないが、フィーニャがゆっくりを首を横に振る
「それで、いかがなさいますか?」
操作されたディスプレイが、“塔”の姿を映し出した
解析されたデータ
途切れた信号
調べるまでも無く知っていたこと
それから………
夜空の上に浮かぶ“月”
遠く見えない月の表面に蠢くモンスターの幻影が見える
静かな冷気を身に受けながら、手にした剣に視線を落とす
視線を受けて答えるようにほんのりと剣の温度が変わる
「遠いよなぁ」
宇宙へ行くために作られた乗り物
宇宙から見た景色
ラグナロクを使えば“月”へ行くことはできるだろう
だがたどり着いた月にはあふれんばかりのモンスターが居る
“塔”から“月”へ向けて送られた信号
“月”から“塔”へ送られ、突如途絶えた信号
月はモンスターの世界
モンスターがあふれる世界に人が住んでいるとは思えない
だが、けれど………
「乗り込む必要があるんだろうな」
確認する義務がある
それにモンスターを片付ける責任もある
「生身じゃきついだろうからなぁ」
零れ落ちるほどのモンスターがいる場所
そこに突入するような無謀なことをすればあっという間に駆逐されるだろう
手にしていた剣が淡く光を帯びる
「そうだなぁ、力を借りないとなんねぇかもな」
剣とつながる主へと言葉をかけた
次へ その頃のスコール
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