英雄と敵
(決意 SideS)
長い時間を掛け“塔”の調査が終了した
エスタの調査員は引き上げ、SeeDへの依頼も終了した
「念のため、新しく発見された階の床を破壊したところ、それよりも下の階は無いことが分かりました」
ガルバディア軍と協力し彼らも床下の確認を行い、見逃しが無いことの証明とした
契約した内容には無かった任務だが、彼等の判断で引き受けたらしい
「そうね、揉め事を回避するには的確な判断だとは思うわ」
調査が終わり、エスタの調査員が引き上げた後に新たな発見があったとなれば揉めるだろう
それを避けるためにも、第三者のSeeDが確認にあたるのは適切だろう
例え後から新たな発見があったとしても、発見を隠していたなどの疑いは最小限に留まるはずだ
最適の選択
彼らにはそんな評価が与えられたはずだ
………その間彼等から目を離さなければ
もちろん全員が目を離した訳じゃ無い
彼等も護衛が楽なように、全員が最下層で纏まっていた
纏まって、その階で発見された何かの装置を取り囲んでいた
その時装置は動いていたのか?
思わず問いかけた言葉に、護衛に着いていたらしいSeeD達は一瞬黙り込み
「いや、動いてはいなかったと思う」
動かないか実験していたようだった
その言葉にキスティス達は納得したようだが、本当に動いていなかったのか怪しい
エスタは今までも幾つかの遺跡に関わっている
発表はされていないが、稼動したままの発見されたものも多い
それはつまり、動いている状態を見ているということだ
修復不可能な状態になっていない限り、彼等が装置を動かすことはさほど難しいことじゃないはずだ
その一瞬をついて、何らかの行動を起こした可能性は充分にある
………気づいていないのなら、聞いたところで無駄だな
何らかの情報を入手したことは確実だ
そして、その情報を隠匿するつもりだということも確実だ
報告から雑談に変わった会話が聞こえてくる
彼等の話を聞くとは無しに耳にしながら、任務完了書へとサインを入れた
久しぶりに映し出された“塔”の映像
“塔”に関するガルバディアの正式見解
施された防御システムから、重要施設であることは間違いない
ただし残念なことに、内部に設置された機械から生産施設では無いことが発表された
続けて最初の調査は終了したが
今後継続して内部の詳しい調査を行うことも報告されている
エスタの調査員の事はあえて話題には上がらなかった
わざわざガルバディアがエスタの功績を発表する必要は無い
エスタは………必要な情報が手に入れば後のことはどうでも良いんだろう
既にエスタは塔への興味をなくした
それは、塔には用が無くなったということ
つまりは情報の入手が終わったということだろう
スコールは窓の外へと目を向ける
遠く見える山脈
遮られた向こう側にエスタがある
「近いうちに行ってみるべきか?」
エスタの今までの様子を思い返す
何が行われているのか
何をしようとしているのか
それを知りたい―――知らなければ―――そう強く思った
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