庄内の釣り<磯釣り編>

庄内発"磯釣り"ということで、当面の間魚信が執筆し掲載された雑誌等の内容をメインに、釣りの醍醐味を紹介してゆきたいと思います。また、磯に限らず様々なフィールドでのレポートも随時お待ちしております。

Volume 06 釣れなくてあたりまえの自然条件(釣りを3倍楽しむ法〜釣り東北連載より)

「誰も教えてくれない、釣れなくてあたりまえの自然条件」を皆様と一緒に考えてみたい。いつもいつもオデコの君には、説得力のある言い訳特集にも使えちやうのだ。

さて、『位臭流温色質(いしゅうるおんしきしつ)』という言葉を知っているだろうか?漢文でもなげれば、お教でもない・・・。なぜなら私が勝手に作った釣り用語で、今が初公開なのだ。「位臭流温色質を知らずしてなにが釣りだ!!」などと偉そうに言っているだけでもカッコいいではないか。この用語は水の事。しかも海水の状況を言ってるのだ。水位・水臭・水流・水温・水色・水質の略語な訳で、全てが釣果に関連しているにも係わらず、釣法論ばかりが先行して案外軽視されているのが実状だ。しかし釣れるも釣れないも”水”次第と言っても過言ではないばかりか、魚の死活にも影響している訳だ。
余談になるが、私の自宅で10年余り大型水槽で飼っていた金魚約20尾の内、6尾が今年の夏に1発で死んで浮いた。原因は高温による水質の急激な悪化だと思われるが、水色に変化がなくても(見た目は澄んできれいな水)魚が排泄する尿が有毒化する事で死に直結する事もあるらしい。従って当然の事ながら、水の状態が魚の動行に大きく変化をもたらす事実を釣り人はもっと知る必要がある訳だ。


「位臭流温色質」とは?

「水位」
水位の変化は月の引力による潮回りからなるものと、風及び波の変化で生じるものが代表的だが、水位の変化状況で釣れる魚とそのポイントが変わるのだ。

「水臭」
潮の臭いが好きだと言う釣り人も多いがその臭いの定義づけは難題だ。どんな臭いなのかは表現的に個人差があるが、たぶん塩と磯や海水中の生産物、それに多くの老廃物などがミックスされた臭いで、バランスがとれていればこそさわやか(?)な臭いであるが、人間ばかりか、魚も遠ざけてしまう悪臭も存在するはずだ。

「水流」
日本海には暖流と寒流が流れている訳だが、水位と関連もしてくる。月の引力による潮の動きで生じる流れが釣りの場合に本流と称し、上り下りに2分される。庄内の場合はさらに”入リ”と”出る”がプラスされる。この本流から枝のように分岐された流れを支流とも言うが、この支流は波と風、それに河川の流れも作用するし、水温の変化も関連する。私自身は本流と支流を”潮流”、磯周りに生じる流れやハライ出しは、”水流”だと思っている。名称はともかくとして、これらは魚の行動を大きく左右する要因となっている事は事実だ。

「水温」
時期によっては「水温1度の変化は、気温にすると10度の変化に値する」と言われる。従って魚の活動と就餌に大きく影響する訳で、水温が急に大きく変化すると活動の停止どころか死に至るので、釣りの対象にはならない。

「水色」
水色が変化する原因は余りにも多いので釣り場における代表的な例に絞る。まず、雨により河川から流出した泥や、底荒れの波により海底から浮き上がる砂泥や沈殿勿などによる場合が殆どだが、波がなくても濁リ続けているのは潮が寄っているためで、地磯では濁りを好むクロダイも釣れない。同じ濁りでも、その性質が釣果を左右するのだ。

「水質」
水の質となると、多くの専門的知識を要するが、釣り人が知っておきたい要件となれば、次の3点ぐらいだと思う。
@塩分濃度と塩の質
塩分濃度が適正で、塩の質が良ければプランクトンの増殖を促し、雑魚の成長を助け、これを補食する大型魚が自然に寄ってくるという理想的なパターンとなる。しかしこれが反対のパターンになれば・・・。
A「水中酸素」
酸素が発生しなければ魚は活性を失い、就餌どころか動けなくなり、最悪の場合はやはり死に至る。
B水質の悪化
川の場合、「水清ければ魚住まず」と言うが、海水に限リ水は清い程魚族は増加繁殖するはずだ。

クロダイ釣りに当てはめると...

「水位」
水位と潮位は本来異なる性質だと思うが、その分類は別として、月の引力が最も作用する満月と新月の時期に潮位の干満による増減差が一番大きくなる。これに伴い潮流も速くなる訳だが、この差が最も大きい大平洋側では数mにも及ぶため、この潮位を知らずしての釣行は危険だ。
沿岸で釣れる多くの魚族は水位の上昇と共に磯周りに寄ってきて、下降に従い遠ざかるのが普通だ。しかし一部の魚は水位が下がると河口とか防波堤にエサを求め集まる。なぜなら海面水位が下がると河口では川から流出する水流が速く、しかも水量も多くなるため、高栄養素が含まれたエサとなるプランクトンなどが海中に放出されるからだ。また提防のり壁面水中に付着していた貝などの生物が水位の低下で露出するため、酸欠で(水中生物は空気中で酸欠となる)海中に落下してくるのを魚族は知っているのだ。

「水臭」
水中における臭いを感知する魚の臭覚は相当なもの。その代表的な魚であるサケは、たとえ数百キロ離れたところからでも自分の生まれた川に戻ってくるのは、生まれた川の臭いを記憶しているからで、各種の実験でも実証されている。あらゆる魚種はサケほど明確でないにせよ臭いに敏感で、時にアミノ酸系の臭いを好む(イソメ類、オキアミ類に混含される)ので、これらが釣りエサやコマセに有効な訳だ。
魚が臭いを感知するのは人問と同じく鼻孔であるが、魚体の側線がレーダー的役目を果たしている。この側線によってエサーつにしても、直接口に含まなくとも自分の好物か否かをあらかじめキャッチしてしまうのだが、もし水中に悪臭を発する物質や要因があれば魚を遠ざけてしまう。特にヘドロ化した海水に魚は生息しなくなる。

「水流」
通常は大潮の期間に沖潮の流量と流速がアップされるため、泳ぎの得意な魚(イナダやマグロのように紡錘型の魚)は活発に動き回るため、当然ながら就餌活動が旺勢になる。しかしやや泳ぎの苦手なクロダイなどの平物は流速の緩い支流や岩碓帯に逃げ込んでしまう事が多いので、特に沖磯では一時的な潮止まりや動き初めの時合いしかチャンスはない。
一般的には潮流が比較的緩い小〜中潮時が全般に好釣果を得やすい。ただし潮回りで生じる潮流の他に、水温と風波の影響で生じる複雑な水流も加味されるので、出来れば同じ釣り場に何度も足を運び、どのような潮流とハライ出しが有利かをチェックするのが潮を読む上達の早道だ。
沖潮がその季節に適した方位に流れている場合は、たとえ釣り座に駆っ込む不利な水流でも、ポイントとタックルの選定次第で釣果は期待できる。

図1は沖潮の理想的パターンの一例
図2は駆っ込み水流時のポイントとタックル選定の一例。


「水温」
グロダイ釣りに適した水温は一般的に16〜20度と言われるが、私自身の実績からすると9〜28度とかなりの範囲で釣れているので余り気にする事はないと思う。短時間での大きな水温の変化は釣果を左右するので、次の場合などはあまり釣果は期待できない。海面と海底部の温度差が大きい春や、初冬に海が荒れた直後で、急に水温が抵下した時。反面、水温が高い夏から早秋にかけて大荒れした時は水温がやや低下するので、河口を含め釣れる事が多い。
庄内の場合、地磯でのタロダイはl月の初旬で終るが、佐渡や男鹿半島、青森の磯では3月初旬までは釣れる。その理由は水温の違いであり、暖流の影響が大きい(図3)。
それぞれの魚は自分の適水温に応じて回遊するが、クロダイの場合眼球に脂瞼(しけん)(脂肪模)がつきはじめると水温の低下を自覚?するのか、越冬のために適水温海域に移動するか、あまり潮流と水温変化の生じない水深のある沖の根などのヒビや穴に入り越冬するものと思われる。

「水色」
上面が澄み、下方がどんよりと黒ずんで見える時や、全体に黒ずんでいる時はあまり釣果が期待できないが、反面上部が濁り気味で底が澄んでいる時は好釣果が期待できる。従って海底狙いで釣れるような日は好条件と言える。
海水が黒く見えたり、濁る要因の一例としてはプランクトンの発生(植物性と動物性がある)で、光を好む植物性は上面に浮き、光を嫌う動物性は水深のある底に沈んでいる。しかし光源の少ない朝夕のまづめ時には植物性のプランクトンを動物性のプランクトンが食するために浮きあがるが、これをさらに食するために魚が集まる訳だ(この時は下が澄み、上が濁る)。釣りが朝夕のまづめが良いとされるのは、この理由でもある。
それに雨により河川から流れ出した泥などの濁りが上潮で流れる時も好条件だが、底潮により海底から浮き上がる砂泥や沈殿物による濁りは、一部分的なものを除いては不適で、さらに全体的に黒く寄って来る時は最悪だ。佐渡や青森の磯のように濁りが生じ難いポイントでも、風波により表面が濁る場合は絶好だ。

「水質」
海水の成分を学者の書いた専門書を調べてみたが、訳の分からない名称ばがりが数多く出て来るばかりで、釣りにはそれ程参考にならなかった。釣れない諸条件としては、特に大平洋側で生じるプランクトンの異状発生で、全体が赤潮の時は酸欠となり、釣果は望めない。また、夜釣りで海面が多くの夜光虫で光って見える時も水温が高く、潮流も悪く水質も劣化しているので釣果は期待できない。
庄内で苦潮(にがしお)と呼ばれる水質の時は特に塩分濃度の高い時で、こんな日には海水が付着した物全てが真っ白になってしまう。従って河口近辺を除いてはあまり釣れたこともなければ、釣れた話も少ない。

という訳で簡単だが今回の話は終るが、皆様のご意見も聞かせてほしい。

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