わが朝日分校では毎年2月に予餞会なる行事が開催される。 これは卒業を間近に控えた4年生を後輩の1、2、3年生が感謝の意味を込めて一日楽しく過ごしましょうという会である。 会場は村の公民館。 まあ今風にいうとコミュニティセンターである。 その日のために,下級生は1ケ月も前からいろいろ計画を練り工夫を凝らした劇や歌などを練習する。 どこに行っても,どんな時代でもそういうことに異常なまでに張り切る奴がいるものだ。小生の友達でこれの好きな奴がいたんだ。 名前はOという。 もう一人仲間がいて,こいつは小生の本当の親友と言ってもいい奴でやっぱりOという。 小生も名字はこれまたOなのだ。 Oが4個集まると世界的に有名な自動車メーカーのアウディというわけだが,3つしかないとせいぜいミツワ石鹸くらいにしかならない。 (ミツワ石鹸の方ならびに家族の方、申しわけありません) このギャグは最近の人は知らないだろうな。 小生もこの文章を書くまで忘れていたよ。 ミツワ石鹸なんて。 ![]() それは別として,高校2年の時の予餞会。 最初のOが予餞会の実行委員に掛け合ってきたという。 いったい、なにを掛け合ったのかと思えば・・・ プログラムの幕と幕との合間。 つまりは幕の中で出し物の準備をしている時間に舞台の幕の前でコントをやらしてもらうというのである。 せいぜい5分くらいの時間なので長いコントではない。 セリフもそんなに長くはないから覚えられるだろう。 いまだからいうが、小生あまり気乗りはしなかった。 しかし,これも友情の一環と割り切ってやることにした。 台本はOが夜も寝ないで何本か作ってきた。 その中で今でも鮮明に覚えているのが,国定忠治の赤城の山の別れのシーン。 出演は小生の親友のOとわれ。 小生が忠治だった。 「おっ親分!」 おもむろに刀を振りかざし 「赤城の山も今宵は火事だーっ」 このフレーズが予想外に受けちゃったのよね。 「国を捨て,縄張りを捨て,かわいい子分のてめえたちともわかれわかれになる門出だーっ」 またまた刀を振りかざし 「雁が鳴いて南の空へ飛んでいかあ。」 そこで子分が 「カリカリカリーッ」 客席ドーッと沸く。 そんなことしてるうちに幕の中から 「まーだおわらねーのけ!はよ終われちゃ」 中から先輩の声。 もうとっくにスタンバイが終了しているらしい。 でも最後まで行かないと終われない。 まだまだ続くのである。 台本が長すぎたってことだ。 そのうちセリフを忘れてしまい, 「セリフわすれてしもた」 それも客席に聞こえている。 Oはそれを小生のアドリブだと思い「親分!しっかりして下さい。」と追いかけるようにアドリブを入れてきたもんだ。 「いや。本当に忘れたんだ」 もう客席は大笑い。 笑いを取るつもりが,本当に笑われてしまった。 それからしばらくの間、校内では,予餞会の3馬鹿と噂された。 まあ,そんなこともあって翌年は小生達が送られる番になった。 最後の花道と,一人で舞台にあがる4年生が毎年何人かいる。 同級生のK。 彼はクラシックギターの名手として,毎年舞台に上がっていたが。 やはり最後もでてきた。
曲名は「禁じられた遊び」。 ウーム。一番ポピュラーな線で攻めてきたな。 これなら誰でも聞いたことがある。 だいぶポイントを稼いだな。 小生も何とか最後にひと花咲かせたいもんね。 ここんところ一生懸命練習してきた洋盤で一気に逆転だあ。 選んだ曲は,なんとビージーズの「マサチューセッツ」。 結果的には音が高すぎて不完全燃焼に終わってしまった。 おまけにアカペラなので迫力もいまひとつ。 やらなきゃよかった。 ところが最後の予餞会。 これで終わりではなかったのである。 一気に盛り上がったクラス仲間約40名が,高校生活最後の打ち上げと称して宴会をやることに相成ったのである。 場所は学校の近くの公民館。 また公民館かあ。 田舎は公民館しかねえのか。 公民館しかねえんである。 なにかするのはそこしかないいのだ。 手持ちのマネーを出し合って,ビールを買った。 鳥肉とネギでうまい肉汁をこしらえてそりゃもう大騒ぎ。 これが最後と思うと気持ちが高ぶって,感激また感激の涙,涙。 手を握りあって楽しかった日々を語り合うわけ。 クラス仲間は女子が12,3名と少なかったけどほとんどが参加していた。 思えば運動に関しては抜群の成績をあげたものよ。 陸上競技,ソフトボール,バレーボール,校内駅伝,どれも1年の時から好成績をあげてきた。 珠算大会だけはダメだったけどよ。 楽しい仲間だった。 ツッパリもいた。 小生はあんまり深くはつきあわなかったけど。 2年の時に4年生をやっつけちゃった奴がいて,しかえしに4年の男子が全員で教室へ乗り込んできたことがあった。 2年の男子は全員廊下に並ばされ,やった友はみんなの前でぶん殴られたっけ。 誰かが知らせたのか,すぐに先生がすっ飛んできてそれ以上はやられなかったが。 運動にツッパリに元気な仲間だった。 こんな友ともうすぐ別れなければならなくなる。 もう学生気分ではいられなくなる。 話でしかきかないけど世間は厳しいぞー。 もうおいおいと泣く奴もいる。 小生少し飲み過ぎて,みんなの前にゲロを吐いてしまった。 しかし普段鍛えてあった力が脈々と波を打ち,すぐにまた立ち直り飲み始めたもんね。 それには並みいる強者達からも一目おかれたものであった。 2月であるから,道は雪が積もっていた。 遠くの友を免許のある奴が車で送っていった。 もちろん飲酒運転ではある。 農家の長男の奴は軽トラックを買ってもらって,それで通学しているのもいたのである。もちろん学校には内緒だよ。 小生はというと,6キロの道を歩いて帰ったと思う。覚えてないが。 翌日は休み。 幹事役をやってくれた友。 夕べ壊した公民館の玄関のガラスを,新しく買ってはめたり,部屋の中を掃除したりと大変忙しい一日であったそうだ。 本当にすまねえ。 そのとき幹事役でいろいろ後始末をしてくれた友が,数年前のお盆に26年ぶりに開かれた同級会でまた幹事をやってくれた。 有り難いやら。申し訳ないやら。 (次回「若者よ眠っちゃいかん!!」につづく) |