恐怖のから揚げ

メンマ工業は非常に体力的にきつい職場で、約一年後にはゲッソリとやつれてしまった。そんな訳で、次の職場へと移ることになったのです。東京のニット会社に勤めている時、海老名で学生服屋をやっているS社長と知り合いました。


その後、何度かお店を手伝ったりした関係から、学生服の仕事をしてくれないかと誘われておりましたのです。
今回はその学生服の仕事での頑張りっぷりを披露いたします。


まず仕事の概要を簡単に記しておきましょう。

海老名市と座間市を行動範囲としている学生服の販売店であります。
本店は海老名市のS町にあり,支店が座間駅前店と相武台店の二店である。
何年か前から海老名市の某S店内にテナントとして出店したが,その当時は三店舗で展開しておりました。
本店は社長の奥様が受け持ち,その下で小生とパートさん一名の計三人でやっておりやした。

社長が座間店,相武台店を回って各店にパートさん2〜4名が交代で勤めておったのです。小生も時としては支店の方へも出向いていろいろやっておったのです。

どちらの店も中学校,高等学校の制服を販売しておりやした。
他の店とちょっと違うところは出張採寸と個別配達をやっていたことです。

電話または事前の訪問予約の際に注文をもらって,採寸の時期になってから一軒一軒の自宅に出張して採寸を行うのです。

そして制服ができあがったらまた配達するといった方法で、この方法は忙しい奥様方には大変好評でした。

そのやり方のおかげでずいぶん成績を伸ばしたのです。

出張採寸には小生と社長があたりましたのです。
出張の手順としては,予約リストの地図を参考にして2,3日前にお客さんに電話を入れて訪問日程を組みます。これは社長の奥様が致します。

平日は子どもが学校から帰る時間に合わせて4時から一人30分の時間配分で8人くらい予定します。
スムーズにいって8時に終われる計算なのですがなかなかそうはいかないのでありんす。

伺っても子どもが帰ってなかったり,なかなか注文が決まらずに時間オーバーしたりでそりゃあ大変でした。

いつものように夕方から車で採寸に回っている時のことである。

その日も予定がびっちりと組まれており、相変わらず時間に追われながら一生懸命仕事をこなしておりました(とする)。
6時頃のお客様だと思うので、まだ3〜4人は残っている。

この時間だからまさか子どもが帰ってないなんて事はあるまい。
さっさと採寸して早く次へ行こ。


以下はそのお客様との会話。右側は小生の行動と本音。

「こんばんわ。○○でございます。制服の採寸に伺いました。 愛想良く。愛想良く。なんたって愛想良くが基本だからな。
「どうもすみません。入って下さいな。」
「失礼しまあす。
よしよしここまでは、予定通り。
部屋に入る。
「すみませんねえ。今ちょうどお風呂へ入ったところですぐに出ますのでちょっと待っててくれませんか。 ゲッ風呂かよ。
まあいいか。すぐにでろよ。
「結構ですよ。ゆっくり暖まって下さい。 と精いっぱいのお世辞。
なにやってんだよ。この時間に来るってのは、前からわかってんのに。
さっさとでやがれ。このクソガキ
あーあ。これで30分をオーバーするのは間違いねーな。畜生。
「本当にすみませんね。すぐに出ますから」と小生に謝りつつお茶を持ってきた。そのあとお風呂の子供に向かって、「○○ちゃん、良く暖まるんだよ」   なんじゃ!そりゃ。
馬鹿いってないでさっさとでてくるんだよ。俺は時間がねえんだ。このクソガキは。
....まだでてこねー。
おかあちゃんの言葉をそのままに解釈して、本当に良く暖まっていてなかなか出てこねーな。まだ何人も残っているのに...イライラ。
10分もたったろうか(随分長く感じた)、おかあさんも良く暖まるように言った手前、早く出ろと言いにくいんだろ。
だからあんなこといわなきゃいいんだ。
まったく。
「これ家であげたから揚げなんです。どうぞ食べながら待っててくださいな。うちのから揚げは結構おいしんですよ。 あれ。今度はから揚げで俺の気をやわらげる作戦に出たな。
出されりゃ食べなきゃいけない。むしゃむしゃ食べた。
特別おいしいと言う訳ではない。というより味なんかどうでもいいんだ。
それにしてもおせーな。
食べて少したってからおかあさんが出てきて「どうですか。おいしいでしょう?家のはいつもにんにくをたっぷり入れるんですよ。」と得意げに自慢した。 ゲッなんでにんにくなんか入れるんだよ。これから他のお客様の所へもいくんだぜ。プンプン臭うじゃねーかよ。どうすんだよこのクソババ!
なんとかかんとか長湯のクソガキの採寸を終え、次のお客様へ向かった。 
予定より1時間オーバー。
にんにくの臭いをプンプンさせながら残りのお客様を3,4軒回った。 もう知らねー。


(次回「良太事件」につづく)