30代は東京に始まり、メンマ、学生服とあっという間に走り抜けたような気がする。それだけ中身が濃かったのか、たしかに自分がやりたいと思ったことを少しも躊躇することなく走ってきた。そして40歳。妻と子供2人。こんな人生もいつまで続けられるのか。 仕事をやめる時にはいろいろ考えるものです。 学生服の仕事をやめるときも、やめる理由ははっきりしていたのですが年齢的に四十ということもあり、今から全く新しい仕事をやるについても大変だろうな・・・と、普通ならば考えますよねえ。 でも小生あんまり深く考えない性格です。いつものようにどんな仕事に入っていっても真面目にやっていればなんとかなるさ。こんな程度にしか考えないのです。 また職を変えるときに、同じ職種をまず考えるのがまあ普通のやり方ですが、小生は過去においてもそのような事が一度としてないのです。 デパートから子供服の問屋に変わるときがややその類に入るかも知れませんが、それでも売るほうと作るほうなので大きな違いがあります。 それに自分自身ではそんな意思は全然感じてはいなかったくらいですから。 そして、次の仕事は「写植」と決めました。 写植という言葉の意味も正確に知っていた訳ではないのですが。 活字の代わりに写真で植字する仕事というふうに解釈しました。 丁度タイミング良く某○○○県写植組合が主催する写植オペレーター養成教室の新聞広告を見つけたのです。 説明会に参加していろいろ説明を受けました。 写植の技術的価値はなかなかのものがあると思いました。自分自身で独立して仕事を得たりとか、写植屋さんに勤めて熟練者になると月に何十万という高収入を得る事もできるようです。 説明会は県下の大小いろいろの写植屋さんが集まって作っている団体でありました。 社員何十名という規模から、父ちゃんかあちゃんの二人でやっている写植屋さんまでいろいろでした。 組合が教室の場所及び資金を調達し、某写植機メーカーが写植の機材とインストラクターの人材を提供して運営されているのです。 この教室で写植を覚えてもらい、その後は組合の中のどこかに入ってくれればいいというのが写植教室のねらいであるようです。 教室で受講をした後は、就職先を紹介致します。 修了後の就職率100%というのが、最大の売りポイントでした。 が技術を習得するまでの期間は見習いという感じで収入もあまり期待できないという。 正直なところ、それでは少々困る。小生はもちろん、一緒に参加した人にしても現在の会社をやめて受講するのだから、見習い期間もきちんとした収入はもらわないと困るのです。最初から熟練者並にもらう訳にはいかないまでも、家族が生活していくだけの最低保証はもらいたい。 その点だけが心配でありました。 教室の開催期間は1ヶ月。その期間は収入ゼロ。受講費9万円なり。 なるほど考えてみれば組合もオペレーターが確保できるし、しかも最初は安く働かせて。うまく考えたものだなあ。 もうすぐ年も暮れる12月25日頃のことであった。 教室開催が翌年の1月10日頃だと記憶している。受講申込は年内締め切り。 説明会の帰り道。参加者5人全員でちょっとコーヒーでも飲もうかということになり自己紹介を兼ねて、いろいろ話し合いました。 川崎市のI君は小生に近い年齢で妻帯者。 営業関係の仕事からの転職希望という人で写植を希望したが、最初の収入がやはり心配という。一見あまり器用なふうには見えず(ゴメン)、これから始めても苦労しそうな気がする。他人の事を心配しているときでもないと思うが。 相模原から来たW君は独身で真面目そうな男だ。 彼は若いからどんどん技術を習得できるだろうが、都会的なセンスはいまいち(良く言うと素朴・純真)という感じでデザイン的な分野では苦労しそうである。目が悪いらしく、コンタクトレンズを使用している。眼鏡に変えたほうがいいよ。コンタクトレンズは危険だ。写植は目が疲れそうだと説明会で感じたから。 横浜市内のT君は、学校を出てすぐの感じのまだ20才そこそこ。 いやあ、うらやましい年齢である。 若いだけに美的センスはありそうで、その気になって頑張れば、将来的な希望は大きく膨らむだろう。相模原のW君と同様独身なので見習い期間の収入は我慢できるし、頑張れ。 紅一点のHさん。年齢はそこそこいっているが(失礼)、知り合いに写植屋さんがおり、機械も買う事になっていて技術を覚えて独立するというラインが出来上がっている。これはもうそれに向かって頑張るしかない。 でも彼女の場合が気持のうえでは一番踏ん切りがついているし、やりがいもある。 最後の小生。一番年齢的に上である。翌年の5月には41才になる。 サモンゴールドのコマーシャル「40にして立つ!」じゃないけれど、ここでやめるのも後になって後悔しそうであった。 その場で、はっきり受講の意思表示をしていたのはHさんだけだった。残りの4人は2、3日考えて見るという。 決心がついたら、年が明けて教室の開催時にまた逢おうと約束し別れました。 一旦別れ、自分自身と考える5人。年明けの再会は果たして。 次回「5人の仲間と(その2)に続く |