外からは逃げまどう人々の悲鳴が聞こえている 「軍に連絡をいれるんだ!」 立ちつくす店員を捕まえ、彼は鋭く命じた その言葉に店員は我に返ったらしく、慌てて走っていく 「静かに、なるべく店の奥へ」 混乱する店内の人々を落ち着かせ店内の隅に避難させる 窓の外ではまだ混乱が続いている 彼は、手近な窓を大きく開け放ち、路上を右往左往する人々に向かい呼びかける 「建物の中に入るんだ!」 声に反応し、はっとしたように、見上げる人々の姿 だがそれは、単に声に反応を示しただけで、内容を理解していない 「建物の中に逃げろ」 震える声をなだめて、人々に伝える 落ち着いた声に聞こえるだろうか? 少しでも安心させる事ができただろうか? 「決して、外には出るな!!」 未だ外にいるのは、エスタの国民よりも、観光客の方が圧倒的に多い モンスターと身近に接した事のない人々…… 「早く逃げろ!」 モンスターはすぐそこまで迫ってきている 彼の言葉に我に返った人々が次々に手近な建物へと逃げ込んで行く 「こっちだ!」 近くの商店の従業員が観光客を強引に中へと連れていく 店内へと入る事をためらう人々へ、中の方が安全だと説得する声が聞こえる 「何か武器はないか!?」 その様子に少し勇気づけられ、彼は店主を捕まえ、階下へ降りながら問いかける 「武器ですか?」 と店主は、身を翻し奥へと消えていく 扉を開け放ち人々を向かい入れる 「2階へ!」 本当は、2階と1階のどちらが安全なのか正確なところはわからない もしかしたら、逃げ道を断たれる2階よりも1階の方が安全なのかもしれない 「これを!」 店主が、一丁の銃を持ってきた 彼はそれを受け取ると、店の外へと飛び出した 通行人は、あらかた商店の中に逃げ込んだようだ、幸いにして鍵をかけ、人々を閉め出すような真似をするところは一軒もなかったらしい 間近に迫るモンスターに、彼はふるえが走る いつもの様に武装しているのならともかく、今は頼りない銃が一つ手にあるだけ 彼は、震える手をなだめ、手近なモンスターの足下へと牽制するように弾を一発撃ち込んだ これでひるんでくれれば……人々が体勢を整える時間がとれるならば…… モンスターが襲ってこない事を願う きっと、今襲われる事があったら、自分はその攻撃を避ける事ができない 下手に攻撃はできない 攻撃した事によって、逆上されるような事が起きたら……… 人々の姿が路上から消えた 「窓を塞ぐんだ!」 ガラスを押さえ、窓をふさぎ……なるべくモンスターの進入を阻まなくてはならない モンスターの一撃を受けたならば、きっと、役にはたたないだろう、がそれでもやらないよりは数倍ましになるはずだ 彼の言葉に、店々の店員達は、迅速に行動を起こした 扉に板を打ち付けようとする店がある 「扉を閉めるのは、最後だ!」 まだ逃げ遅れた人がいるかもしれない 彼の背後ですべて終わったとの声がかかる 声に反応し彼もまた、店の中へと逃げ込む 頼むから……… モンスターが閉ざされた店の中に入ってこないことを必死で願う 鍵を掛ける音、補強するように板を打ち付ける音 店の外をモンスターが悠然と歩いていく 次第に店々から聞こえていた物音が聞こえなくなる 「お、おい……」 窓の外を見ていた人の慌てた様な声に、彼も窓の外を覗き見る どこに潜んでいたのか、次第にモンスター達がその数を増していく ………頼む、早く来てくれ…… 数を増やすモンスターに、彼は、仲間達の一刻も早い到着を心底願った |