英雄と犯罪者(6 SideS)


 
スコールは、ラグナと共に、連絡を待っていた
先行部隊からの連絡、陽動部隊からの知らせ……
まずは第一に村人の身柄を確保しなければ手出しをすることができない
ラグナに村人の身柄を身柄を確保したという連絡が入った事を教えられる
スコールは、ガンブレードに視線を落とす
手はずでは、敵をこちらへと誘導する事になっている
待っていればほぼ確実に敵が来る
途中にも何人かの兵士を配備している為、どれだけここまでたどりつけるか解らない
逆にここまでたどり着いたということはそれなりの実力を持つ事を示している
……そうでなかったら、組織内の幹部といったところか……
自分達の身を守る為に部下を見捨てる
そういった人間は数多く存在する
そもそもガーデンの元教師達はあの抗争の時点で、自分達の保身の為にSeeDを敵に引き渡そうとしていたのではなかっただろうか?
ラグナから、敵が向かってくると知らされる
ガンブレードを構えながらラグナの方へと視線を走らせる
ラグナはいつものマシンガンを持っていない
……今度は何をするつもりだ?
ラグナがマシンガン以外の武器を使える事は知っている
きっと、なんらかの得物を持っているのだろう
……隠し持てる位のもの……
どうするつもりなんだろうな……
スコールが声を掛ける前に気配が近づいて来た
追っ手から逃げているのだろう、足音が聞こえる
次第に近づいてくる気配
気配を隠すことも忘れ、近づいてくる集団の中に妙な気配を感じる
なんだ?
スコールは、通路の先を見据えた
人の数倍はある影が見える
そして、嫌悪を抱くようなグロテスクな姿
モンスター!
嫌な気配、モンスター特有の息吹
スコールは、ガンブレードを構え直す
そう言えば、前もモンスターを操っていたな……
彼等はあの時も自分で手を下すことなく、モンスターをけしかけていた
スコールは、相手の正確な実力を知らない
モンスターを操れる程、なのか、それともモンスターを操る事しか、なのか……
モンスターをけしかける声が聞こえる
そう言えば、顔も知らないな………
そろいの不気味な覆面をかぶっていた
どうやら知り合いらしいのだが、スコールは、彼等の素顔を見たことがない
スコールは、その覆面がとれた姿をみたことはない
………………
顔も知らない相手、偶然町中ですれ違ったところで、気づく事もないだろう
相手が知り合いだと思えないのはその為だろうか?
「モンスター、か……」
ラグナのつぶやきが聞こえた
スコールは足を踏み出した
ラグナは、武器を構えてはいない
スコールが見た限りでは、何の武器も持ってはいないように見える
本当に持ってきていないのか、それとも小型の武器なのか
どっちにしろ、大した威力はないな
「……さがってろ」
何を使うつもりかは知らないが、モンスターと戦う事など、全く考えていないに違いない
驚いたようにラグナが見ている
むっとして、スコールは、モンスターへと攻撃を仕掛けた
……悪かったな……
珍しい事をして……
いらいらした気持ちを目の前のモンスターへとぶつける
脇を人影が走り抜ける
繰り出した刃先でモンスターをしとめながら、スコールはラグナがモンスターを切り裂いて行くのを見た
な………
苦痛に暴れるモンスターの攻撃を避ける
一瞬ラグナがこちらを見る
右手に握られたのは短剣
……あんなもので……
モンスターの絶叫が響く
短剣を一振りし、ラグナが人間を相手にする
スコールは、モンスターへ向き直る
確かにいくら腕が良くても、短剣でモンスターの相手をするのは難しい
残るモンスターは、2体
自然と役割が分担される
狭い洞窟内で、行動が制約される
スコールは、誘うようにわざと隙を見せる
まさか、戦わせない為に、とかいわないだろうな?
人間ならば、こんな手に乗ったりはしないだろう、だが、モンスターは……
1体のモンスターが、予想通り攻撃をしかけてくる
予測済みの動きに、スコールはモンスターが近づく直前、後ろへと下がる
モンスターは、攻撃を外しバランスを崩した
スコールは、ガンブレードを振り下ろす
ラグナは何も言わなかったが、スコールの知り合いだと言うことを多少気にしていた
一撃は、うまい具合に急所に当たったらしい
音を立てて、モンスターが倒れた
……動きづらいな……
刃先の長いガンブレードは、狭い空間での戦闘に向かない
……そこまで考えての行動には見えないな
スコールをこの作戦に誘ったのはラグナの方だ
そして、ラグナは、モンスターが出てくる事を予想はしていなかっただろう
短剣を振るうラグナの姿が見える
…………
武器に短剣を選んだ事は正しいのかもしれない
体が大きいためか、動き辛そうなモンスターに目を向ける
狭い場所での戦闘はモンスターにとっても不利だろう
邪魔だな
スコールは、モンスターの死骸をさける様に移動する
少しでも広い場所を確保しないと、振り上げた剣先を洞窟の天井へ当てるといった失態を演じる可能性がある
モンスターがスコールの動きに誘われるように向きを変える
今だ……
スコールは、ファイガの呪文を解き放った
無防備な胴体に魔法が炸裂する
暗い洞窟が明るく照らされる
前方で人の悲鳴が聞こえた
燃え上がる炎に怯んだモンスターの元へ間を置かずスコールは飛び込んだ
……終わりだ
ガンブレードがモンスターの体内へと入り込んだその瞬間、スコールは引き金を引いた
断末魔のモンスターの悲鳴がこだまする
どうなった?
悲鳴の主はラグナではない
スコールは、モンスターを倒したことを確認すると、前方の戦いへと目を走らせた
だが、1対複数の戦闘は……
「きさまらっ」
残っているのは、僅かに二人
立ち上がった男が剣を抜き放つ
そして、ラグナの背後でも男が立ち上がる
危ない!
ラグナが一方の攻撃を防ぐ隙に確実にもう1人が攻撃するだろう
スコールは、敵の元へと走り寄った
ラグナは、前方の敵を見つめたまま、右手を動かした
スコールの警告よりも早くラグナは、背後の敵へ向かって短剣を投げた
短剣を投げつけられた相手は、手に持った剣を取り落とした
無防備なラグナに向けた剣を振り上げたその首筋に、スコールはガンブレードの刃を押しつけた
「降伏したらどうだ?」
ラグナが投げた短剣は、右腕を岩壁に縫い止めていた
……狙ったのか?
ラグナが背後を振り返る
のんびりとしたその態度は、短剣が当たっている事を疑っていない
なんなんだ、いったい!
何を考えているんだ、と怒鳴りつけたかったが、かろうじて、スコールは口を閉ざす
声と、灯りが近づいてくる
エスタ兵士達が追いついたのだろう
「ゲームオーバーってとこか?」
振りかざしていた腕が力無くおろされ、手の中の剣が滑り落ちた
 
 
 
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