英雄と契約
(SeeD SideS)


 
ガーデンからの呼び出し
数ヶ月ぶりに再会するいつものメンバー
学園長室の前で、彼等は互いに笑みを浮かべ挨拶を交わす
彼等は、SeeDとしての初の任務以来、同じメンバーで仕事をしてきた
彼等が顔を合わせるのは仕事の時のみ
学園長室の前で、彼等は互いに笑みを浮かべ挨拶を交わす
平和になった世の中で、SeeDの出番は極端に少なくなっている
たまにある依頼も、彼等の実力では任務を達成する事も難しいモノであったり
彼等が苦手とする分野だったりする事が多い
久しぶりにまわってきた任務
彼等はそれぞれの武器を取り、依頼内容を聞くと同時に、大した下調べもせずにガーデンを飛び出した

観察のために急ぎ作られた小屋
多数の人間の寝泊まりのために作られたテント
ほんの一時前まで賑わいをみせていたはずのその場所は無惨な光景をさらしていた
「ひどいもんだな」
引き裂かれたテント
辺りを漂う切れ端は、テントに使われていたはずの布だろうか
屋根が吹き飛ばされ、壁に穴の空いた小屋
すぐ側には、焼けこげた丸太
半ばから裂けた木が遠く転がる
逃げまどう学者達の悲鳴さえ聞こえてきそうな光景
「確かにひどい」
ひどいとはみじんにも思っていないような口調
その口元には笑みさえ浮かんでいる
遠い神殿に群がるモンスターの影
「あれが問題の敵って訳か」
遠くに見えるモンスターを見つめながら、一丁のライフルを取り出す
この地を逃げ出した学者達にとっては、恐怖の対象
だが、彼等にとってはありふれた出来事
多少の違いがあるとはいえ、見慣れた光景
彼等は、それぞれの獲物を取り出す
数匹のモンスターが近くを徘徊している
「油断するなよ」
笑みを浮かべていた顔が一瞬のうちに引き締まる
「そっちこそ、な」
引き金が引かれる
辺りに響く銃声を合図に、戦いが始まった

遺跡の中を彼等はゆっくりと神殿に向かっていた
どういう訳か、モンスターの大部分は、神殿の周囲から離れようとしない
依頼の内容はモンスターの殲滅
遺跡を安全に調査できるようにする事
モンスターを倒さなければ仕事は終わらない
本来なら、モンスターの群に自ら近づくような真似をするはずがない
だが………
まるで罠を張る様に動かないモンスター達
そして、あっさりと倒れたモンスターの姿
彼等は相談の上、自ら近づいて行く事を決めた
モンスターの影に黒く染まった神殿
「大した敵じゃない、大丈夫だ」
言い聞かせるように囁いた言葉は喉に絡む
「さっさと終わらせて、帰ろうぜ」
陽気さを装った声は緊張のあまり掠れている
重苦しい沈黙
誰かが唾を飲み込む音がした
緊張に満ちた顔
緊張を紛らわせるかの様に、助けを求めるかの様にそれぞれが持つ武器を固く握りしめる
「行こう」
同時に発せられた複数の声
深呼吸をする音
気合いを入れる声
彼等は、覚悟を決めゆっくりと神殿へと向かった
 
 
 

 
次へ その一方で?