英雄と契約
(現地 SideL)
地面に倒れ伏すモンスターの死骸
空中を埋め尽くそうとしているモンスターの姿
そして………
視界に映る光景を見て、ラグナは息を飲み、同時に走り出していた
ラグナの背後で、慌てた様な声が聞こえる
同時に呆れたようなため息と、すぐさま追ってくる気配
武器を構えようとして、ラグナは自分が持っていた獲物に気がつく
右手に携えた一振りの剣
………使えるんだろうな?
抜き身のままの刃、細やかな細工
実戦用とは思えない剣
……ま、なんとかなるさ
ラグナは、右手の剣を握り直し、弧を描いた
軽やかな感覚
両断されたはずのモンスターが、地面へと沈んで行く
「……大丈夫みてーだな」
素早く目を走らせた刃先は刃こぼれ一つしていない
武器として使えるならそれで充分だ
これが、何の目的で作られたたモノなのか、何のつもりで祭られていたのか、今はどうだって良い
「ラグナ君、後方の部隊はどうしたら良いのかな?」
からかうようなキロスの声
「任せた」
剣を薙ぎモンスターの群を切り開いていく
「了解した」
立ち止まる足音
遙か後方で、十数人の人の気配が動き出した
前方で、銃声が聞こえる
その中に混じった、独特の銃声
―――ガンブレードの振るわれる音
まだ、距離がある
焦る気持ちを宥めながら、道筋の敵を確実に屠っていく
頭上から接近したモンスターが、串刺しにされる
ほんの少し前方へ、ハープーンが突き刺さる
ラグナの口元に微かな笑みが浮かぶ
ほんの一瞬投げかける視線
さも当然だと言うように、ウォードが重々しく頷いた
はじめの内は全く気づくこことが無かった
ふと、視線がそれた瞬間
剣で切り捨てられたモンスターが溶ける様に消えていく姿を見た
「……うそだろ?」
思わず口に付いた言葉
その光景に唖然としながらも、無意識に、襲いかかってきたモンスターを切り捨てていた
音のないため息が聞こえた
視線を向ければ、ウォードが今頃気づいたのか、という表情で、モンスターをなぎ倒していく
「気づいてるんなら教えろよ」
『それくらい普通気がつくんじゃないか?』
ラグナは言葉に詰まる
使っている本人が気がつくのは当然
確かにその通りであり、気づかないのが当然とも言える
「この状況で、いちいち確認なんかできるかよ」
それほど強くはない、それでいて大量の敵
向かってくる敵に一瞬視線を向け剣がふれると同時に、次の標的へと視線が移動している
大量に、四方から攻撃してくる敵の結末まで見ている余裕は、ない
次第に、切り捨ててから消失する間での感覚が短くなっていく
確実にモンスターじゃねーな
溶けた訳でもなく、元から無かったかのように消失する生命体(物体)が生息しているはずもない
程近くで、銃声が鈍く鳴り響く
「どっちにしろ早いとこ片をつけねーとな」
ラグナが持つ剣に切られ消失する敵も
普通の武器を使ったモノでは、傷を負わせる事ができない
……傷を負わせてもすぐに再生していく
倒れない敵と無限に戦うのは無理がある
剣を振るう腕に力がこもったその時
刃にふれた敵が消失し、波紋が広がるかのように、ラグナを中心に敵の姿が消えていった
『汝の資格を認めん……』
ラグナの脳裏に威厳のある声が響いた
次へ そのころのスコールは?
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