英雄と契約
(神殿 SideL)


 
神殿内へと慎重に足を踏み入れた
微かな光を放つ剣
呼応するかのように、神殿内部が不思議な光に包まれる
敷き詰められた石畳の上、輝く光の道筋が現れる
神殿の奥へと、一直線に続く道
「……この上を通れってことだろうな」
人が3人ほど肩を並べて通る事のできる道幅
じっくりと見れば、他の箇所よりも、人が歩いた形跡が伺える……様な気がした
「……おい」
あっさりと足を踏み出すラグナの背後から、慌てたような、諦めたような、複雑な感情の混ざった声が呼びかける
ラグナは、かまわずゆっくりと歩き出す
確かに何が起きるかわかんないけどな……
固い石の感触
特別変わった事柄も起きずに石畳は、そこにそのまま存在している
ぼんやり眺めてたってどうしようもないだろ?
神殿の外へ逃げられるぎりぎりのところで立ち止まり様子を伺う
背後で、スコールが神経をとぎすませているのがわかる
「なんともないみたいだな」
コレぐらいなら大丈夫だ、と判断した時間とほとんど変わりない時間でスコールが緊張を解いた
なんだ、気が合うじゃないか
決して言葉に出来ない言葉
口元に笑みが浮かびそうになるのを必死で押さえる
足音もたてずにスコールが追いつき、追い越していく
背中が、全身が前に進むなと主張している
ラグナは苦笑し、おとなしくスコールの後を歩き出した

神殿の奥深く、地下へと続く階段
光源は足下に灯った微かな明かり
程良い緊張感が身体を包んでいる
あれほど大量に現れていたガーディアン達の姿は全く見えない
長い沈黙
微かな足音しかしなくなってからずいぶん時間がたつ
「……いったいここは何だ?」
スコールが思い出したように話しかける
「さあな」
さすがにそれはな……
一瞬向けられる鋭い視線
諦めたのか、納得したのか、すぐに視線がはずされた
……どうせ、何か謂われがあったところで、ソレが真実かどうかなんてのは
「起こってみないと分からないだろ?」
知らずの内に声に出していた小さなつぶやき
言葉が聞こえたのか、前を行くスコールが微かに頷いた様な気がした
 

 
 
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