英雄と契約
(邂逅 SideS)


 
神殿の最深部、暗い灯りの中ほのかに浮かぶ巨大な影
身動きしないソレは、まるで置物の様に見えた
強すぎる命の気配
G.F.…………
―――我が住処を荒らしたのは、おまえ達か?
脳裏に響く静かな声
「いいや」
荒らすも何も、歩いてきただけだしな
側近く見えるG.F.の瞳が、答えを知っている事を知らせている
―――では、私を起こしたのは………
……って、言われてもな
目覚めたのは、迂闊な学者達のせいだろうと予測する事はできる
だが………
「………いつ起きたんだ?」
絶対にそうだとわからない限り迂闊な事は言えない
G.F.からは敵意を感じ取れない
だからと言って、何も起こらないと言うことはできない
先ほどから感じるのは好奇心とは違う探る様な瞳
G.F.長い間沈黙していた
相手に圧迫感を与えるための、間
何か言いたそうなスコールの気配
強ばりかけた空気がほぐれている
――――なるほど、言われてみれば確かにその通りだ
G.F.が声を立てて笑う
……平和に解決……って訳にもいかないみたいだな
ラグナが内心ため息をつくとほぼ同時にG.F.が笑いを納める
圧迫感を覚える程の強い視線
ガンブレードを握り直す音が聞こえる
不意に感じる違和感
G.F.の視線が手の中の抜き身の剣へと向けられた
―――剣を持ち出したのはそなたか?
心地よい緊張感
「ああ、………勝手に持ち出してわりぃ……」
違和感を宿した戦いの気配にラグナは、見えない笑みを浮かべる
それに気づいたかのようにG.F.の微笑
―――いや、それは誰もが持ち出すことを許されたモノだ
確かに感じる戦いの気配
「へぇー」
そういうことか………
G.F.から流れ出る気配が、命の危険が無いことを知らせる
ゆっくりとG.F.が視線を移動させる
気配が変わる
まるで煽るように、強くなる敵意
ラグナは、引きずられそうになる感情を押さえつけた
―――なるほど
納得したかの様な声
――――なるほど
もう一度、違う口調で繰り返される

身体が、反応を示す
無言の内に示された戦いの合図
――――それでは
2人同時に剣を構える
―――――始めるとしよう
鋭い声と共に、突風が吹き抜けた 
 
 
 
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