英雄と契約
(戦闘 SideS)


 
戦いの緊張に張りつめた神経は
突然行動を起こしたG.F.を警戒する動きを取った
ラグナとの間に割り込んでくる身体
攻撃に向かいかけた肉体を、脳裏の奥で囁く声が止めた
……キケン
疑問に思う間もなくスコールは攻撃しようとするその身体を止める
足を止めたスコールの目の前で
G.F.の身体が不気味に律動する
自然にG.F.から身体が遠ざかっていく
何をするつもりだ?
予測のできない動き
ガンブレードを握る手に我知らず力が籠もる
G.F.の全身が蒼く染まっていく
濡れたように湿り気を帯びた身体
口元から牙が覗き、背に小さな翼が出現する
姿を変えたG.F.
……ドラゴン?
立ちふさがるその姿はドラゴンに近い様に思える
そのドラゴンの背後に赤い色彩が浮かび上がる
背を向けたもう一体のドラゴン
どうなっているんだ?
スコールの疑問に答えるかのようなタイミングで、向こう側からラグナの声が聞こえた
「どっちもあんたか?」
……な、に?
目を見張るスコールの視線の先で、G.F.が意地の悪い笑みを浮かべた

自在に動く手足は予測のつかない方向から攻撃を仕掛けてくる
空を切る音を聞き、気配を感じる
どこからとも無く現れる、チャクラム
ガンブレードではじき返す
与えられる攻撃はすべて攻撃で返す
金属がぶつかる音
衝撃で現れる火花
激しい戦いが続いていた
立ち塞いだ身体の向こう側は静まり返っている
まるで戦いなど繰り広げていないかの様な静かな気配が伝わってくる
……何をしているんだ
微かに生まれるいらだち
スコールは、目の前の身体にガンブレードを振り下ろす
G.F.の身体に生じる傷跡
ガンブレードの引き金を引く前に、頭上に感じる気配
スコールは刃を引き、後方へと飛び去る
スコールの目の前で、負わせたばかりの傷跡がふさがっていく
どうなってるんだ!?
先ほどから繰り返される光景
神殿の周囲にいたガーディアンよりも性質の悪い存在
………それなら
スコールは決意を秘め、ガンブレードを構えた

すぐに回復していく傷跡
どれだけ攻撃しても決定的なダメージを与えることができない
先ほどの光景を思い出し呼び出そうとしたG.F.からは反応が返らない
周囲をチャクラムが巡っている
飛んできたチャクラムをたたき落とし、スコールは一気に間合いを詰めた
ガンブレードを握る手に力がこもる
―――それなら
渾身の力をこめてガンブレードをその身体へとたたきつける
刃先が肉体へと深く食い込んで行く
グリップを握り、さらに刃先をもぐりこませながら
引き金を引いた
辺りに響く銃声
衝撃で、剣先がより深くもぐりこむ
そのままもう一度引き金を引く
石づくりの神殿に音が銃声が反響する
塞がろうとする傷口が再び開く
尚も引き金を引こうとするスコールへ、鋭い爪が振り下ろされる
背中に感じる熱
傷口から赤く血が流れ落ちる
口から漏れかけた悲鳴を飲み込み
立て続けに引き金を引く
刃から伝わる衝撃
衝撃で、視界が赤く染まる
身体の奥底から、上昇してくる存在を感じる
……G.F.の召還
スコールは彼の声を聞いた気がした

 
 
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