英雄と契約
(戦闘 SideL)


 
攻撃に備え身構えた
当然の様にスコールから間隔を置く
一瞬の出来事
目の前のG.F.が、その間に身体を割り込ませる
しまった!
開いた間隔を詰めるには、もう間に合わない
意識する事の無かった思い込み
本来なら、G.F.に不利な体勢
両サイドからの攻撃
本来ならチャンスと見るだろう
だが、この場合は?
ラグナは、一瞬の判断でG.F.から離れる
何か裏がある
油断無く剣を構えたその目前で、G.F.の姿が奇妙に歪む
全身を包む赤く鈍い色
皮膚が金属の輝きを放ち、鋼の様な爪が伸びる
巨大なドラゴンへとその姿を変えていくG.F.の背後に、タイプの違うドラゴンらしき影が現れる
……なんだ?
背を向けた蒼い背中
鈍い輝きを放つ顔
―――コレで良い
満足げな声が聞こえる
まさか……
「どっちもあんたか?」
聞こえた声は一つ、聞こえた声は先ほどと同じモノ
―――その通りだ
楽しげに告げる声
分裂する生き物はごくまれに存在する
だが……
全く別の2つの形へと別れるモノの話など聞いたことがない
……面白く成ったって言うべきか?
見たことも戦った事も無い敵の存在
さて、どんな攻撃をするんだろうな?
ラグナは、剣を構えた

横殴りに炎が襲ってくる
ぎりぎりまで引きつけ、炎をかわす
頭上から巨大な爪が振り下ろされる
剣で受け止め、払う
静かに繰り広げられる戦い
ラグナは、静かに攻撃を受け止め、避ける
立ち塞いだ身体の向こう側から激しい物音が聞こえる
…………なんだってこんな事してるのか、なんて考えちゃいけないんだろうな
突然仕掛けられた攻撃、理由の無い戦い
ため息を一つ
まぁ、向こうには、戦わないとならない事情があるのかもしんねーけど?
ふわりと剣をひらめかせる
物騒な爪を刃が受け止める
辺りに澄んだ音が響く
もしかして、こいつのせいか?
手の中で、怪しく赤い輝きを放つ光
抜き身のままの太古の剣
身体を舐めるように炎が吐き出される
身をかわし、剣を楯にの代わりにかざす
………どうしても戦わないとならないみたいだな
ラグナの瞳に物騒な光が宿った

吐き出される炎の玉
敷き詰められた石畳を切り裂いていく強靭な爪
口の元から除く鋭い牙
炎を避けたところへ鋭い爪が襲い掛かってくる
さまざまに繰り広げられる攻撃の数々
1つの攻撃が繰り出されると同時に次の攻撃が襲いかかってくる
わずかな動作で、爪を払い、その掌へと剣を突き立てる
強靱な皮膚には、傷を負わせることが出来ない
………さーてどうしたもんかな
先ほどからさんざん繰り返された攻撃
G.F.の身体に触れた刃は、無害な物質へと変化する
表に溢れていたガーデンを相手にしたときと逆の現象が起きている
関連があるって事なんだろうな
装飾の施された剣を軽々と振りながら、攻撃を避け、攻撃に転じ、思い悩む
何か鍵に成るモノがあるはずだ
視線は手がかりを求め部屋の中を彷徨っていた

銃声が鳴り響いた
何度も重ねられる音
まともな攻撃ではこれほど連続した銃声が響くはずはない
「スコール?」
剣を振るう手が止まる
ラグナに生じた一瞬の隙
巨大な爪が、ラグナの右腕を引き裂いた
傷口から流れる血が、剣をぬらした
必然にも似た偶然
剣が赤く、強く発光する
ラグナの脳裏に声が響いた 
 

 
次へ スコールサイドヘ