(蜃気楼)
在るはずの無いもの 先ほどまでは確かに無かったもの 「……おい」 彼は目を擦り、ソレが以前として目の前にある事を確認すると、恐る恐る側に居るはずの仲間に声を掛けた 「…………なん……」 煩そうに腕を払い、文句を言いかけたその動きが止まる 「……なぁ、見えるか?」 問いかけというよりは、確認の言葉は 「何だってこんなものが……」 聞こえてきた呟きに肯定される ……ああ、こいつにも見えてるんだ その瞬間、広がったのは安堵 「こりゃ、ホンモノじゃ無いよな」 ぼんやりと宙に浮かんだ都の姿は、うっすらと向こう側の景色が透けて見える 古びた都 どこにでもありそうな風景 綺麗に整えられた村には、人がいる様子も無い 「まったく、誰の悪戯だ」 憤慨したように呟いた声が震えている 美しく幻想的な光景は、どこか不吉な予感を抱かせた |