英雄と幻影
(目撃 SideS)
様々な土地で現れる幻
同一のものとしか思えない、その都の事は話には聞いていた
ふと、視線を上げた先に気が付けばソレは存在していた
風に揺らぐぼやけた都
重なり透ける様に背後に位置する山が見える
「アレって……」
「噂の幻ってやつ!?」
出現したモノに気が付いたらしい人々が、口々に騒ぎ始める
彼等の声を耳にしながら、スコールは幻を見つめ
次いで周囲へと視線を向ける
……………
「どうなってるんだろうね」
近くに人の気配は無い
ここ数日、一般車両が近くを通った記録は無かったし
不審な人影を見たという報告も無かった
悪戯じゃなかったのか?
石造りの道、石造りの門
古い本で見るように街並み
今現在の地上には確かに存在しない建物
幾度か見た遺跡とは違い、今なお人が生活しているかの様に破損の無い街並み
近くで、映像を投影している様な気配は感じないが
宙に揺らぐ街並みは、やはりどこか作り物めいて見える
――――――
セルフィ達が興味深げに、幻の側に走っていく
噂では、幻は幻らしく、手に触れる事は出来ないと言う事だ
だが
「………なんか、変じゃないか?」
巨大な都を見上げる彼等の姿
スコールも、彼等の後を追い幻の側へ足を運ぶ
近づくにつれ巨大になる建物は視界に収まらなくなっていく
「蜃気楼とも違うんだね」
まるで実体であるかの様に存在する幻
コレが作り物でないとするならば
何らかの力が作用していると考えて良いはずだ
スコールは、幻を睨み付けるように見つめる
……いやな感じがする
普通ではあり得ない現象は
何かが起こる前兆の様に感じられる
「これ、どうする?」
「……どうしようもないんじゃない?」
伸ばした手が触れる前に
幻がまるで逃げるかのように姿を消した
次へ その頃のラグナ
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