英雄と幻影
(予感 SideS)
真夜中、スコールは飛び起きた
心臓が激しく脈打っている
身体から、どっと吹き出した汗が流れ落ちる
―――今のは……
心臓をなだめようと荒く息を吐き、額の汗を拭い取る
「夢、だったのか?」
夢を見ていたのは確かだけれど、あんな夢を見る理由が判らない
俯いた顔を光が照らす
カーテンを通して射し込む光がやけに明るい
―――深夜三時
指し示された時間に眉を潜める
こんな時間にこれほど明るい筈がない
時計が止まっているのか?
頭を過ぎった考えに、そんなはずはないと思い直す
自然と視線が窓へと向けられる
伸ばした手がカーテンを引く
ガラス越しの冷たい冷気
スコールは、眩しさの目を細める
窓の外には夜の空気
いつものと変わらないモノの他に、空に眩しい程の光を放つ月が浮かんでいる
白い光を放つ月
なんだ、これは?
眩しい程に輝く月の姿は、何故か恐怖を感じさせる
とても重大な事が起きると告げるような輝き
輝く月は何かの前触れ
何かが起こる様なそんな感覚
どこかであの月を見た事がある様な気がする
強く輝く月が記憶を刺激する
それほど、遠く無い時間の記憶
けれど、どこか霞が掛かっている様な……
良く見ようと手を付いたガラスが小さな音を立てる
音に驚いたのか、窓の外を鳥が羽ばたいていく
重なる光景は、夢の中の寸分無く同じもの
「何が起きるんだ?」
あり得ない現象に、呟きが漏れ出る
視界の中で、月がいっそう輝きを増した気がした
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