英雄と幻影
(依頼 SideS)
―――我が契約者よ
頼みがある
ガンブレードを手に訓練施設へと向かう途中、脳裏に声が響いた
不意に、目の前に白色の世界が広がる
永遠と続く山の景色
先ほどまでとは世界が一変する
どこだ、ここは?
ガーデンの廊下を歩いていた筈が、校外どころか見覚えのない山の上にいる
スコールはゆっくりと視線を巡らせる
また何か起きるのか?
どこかあきらめにも似た気持ちで、眼下を見遣る
……何だ?
ゆっくりと、浮上して来る巨大な影
スコールが見つめる先で、急上昇し目の前へと着地する
巨大なG.F.の姿
「…………………」
なんだっていうんだ
目の前のG.F.に呼ばれたことを悟り、スコールは訝しげに彼を見つめる
G.F.の口元が笑みらしきモノを形作る
「呼び立てして済まないが、頼みがある」
言葉と同時に巨体が近くに顔寄せる
「……頼み?」
わざわざ呼び出して頼むような事があるのか?
「我等には手が出せぬ故、そなた達の手を借りたい」
真剣な瞳が間近に見える
手が出せない?
「……話しだけは聞く」
G.F.が対処出来ないという事を解決出来ると思える程、思い上がっては居ない
「先日そなたも見ただろう」
そっと、瞼が閉じられる
G.F.の身体から漏れ出る光
光の粒子が集まり、小さな幻を作り出す
規模は違うが、先日の幻影と全く同じもの
何か嫌な感じを覚えた幻
―――幻影の都
そう言えば、実体化したという話をしていたな
先ほどゼルが興奮したようにまくし立てていた
「そう、その都の件だ」
何か言い淀む様に、G.F.が言葉を途切る
「そうだ、その地に棲む者を余さず滅ぼして欲しい」
重く告げられる言葉
………………
深い悲しみにも似た感情がなだれ込んでくる
「いったいどういう事だ?」
スコールは言葉に詰まり、ようやくそう問いかけた
瞳が深い悲しみの色を湛える
「やはり、言わねばならぬか……」
辛そうな声音
「…………」
気持ちを落ち着かせるかの様に、しばらく時間を置いた後
「人の記憶からは、消えてしまった遙か過去の物語だ」
ゆっくりとした口調で語り始めた
次へ 同じ空間で…
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