英雄と幻影
(準備 SideS)
G.F.からの依頼を受けて数日
スコールは休暇を取り、問題の場所を訪れた
海を隔てた場所に、以前見た幻と同じ都が見える
これだけ見れば古い遺跡
そう言われて違和感が無い
けれど…………
都が見える海岸には、学者達が忙しなく行き来している
話によれば、あの地は、上陸する事はできても、不思議の力により、都の中にはどうやっても入る事が出来ないらしい
上陸するにしても足が必要だ
もうすこし、話を聞く必要があるかもしれない
声高に話しをする人々の間をすり抜け、スコールは村中へと足運ぶ
揺らぐことなくその場所にある都が視界の隅に流れる
……急がないとな
「よっ」
陽気な声と共に、目の前にラグナが現れた
なんで此処に居るんだ?
条件反射のように頭を過ぎる言葉
そして、脳裏にその疑問が浮かんだ次の瞬間、ラグナが此処に居る事がそれほど予想外だと思っていない自分に気付いた
「……………」
同じようにG.F.から依頼された……
すんなりと納得出来る理由
「スコール?」
何も言わないスコールを不審に思ったのか、ラグナがじっと見つめてくる
無意識の内に視線を逸らす
「んじゃ、今後の打ち合わせでも始めようぜ?」
ラグナの手が肩に回される
避ける間もなく、強引に村外れへ向けて歩かされた
前日には来ていたというラグナの話で判った事は余り無い
ただ、学者達が自分達が悪い訳ではないという証明の為か、見学ツアーを始めたという事
どこをどうやっても、都の中へは入る事が出来ないという事
それが収穫と言えば言える
「それはいつでも行けるのか?」
「頼めばいつでもOKみたいだけどな……」
忙しなく動く人々の姿が見える
「贅沢は言っていられない」
人目に触れないに越したことは無いが、時間が足りない
「確かにその通りだな」
幻の都は、そう何時までも存在していられない
早々に、スコールは学者達の元へと足を向けた
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