(幻の都 SideL)
案外あっさりと、その都はラグナを受け入れた 入れる者と入れない者、ある一定の法則があるのか それとも、何らかのタイミングが作用しているのか はっきりした事はまるで判らない ただ、判っているのは、 辿り着いた先は理想郷では無く、滅びの気配が濃厚な世界 辺りを漂うのは澱んだ空気 生き物の気配が全く感じられない 世界を覆う静寂 「幻か…………」 目に見えていたのは偽物の世界 これがセントラの村人が抱いていた嫌悪感の正体 永遠の平穏 声を潜めた囁かれた言葉が脳裏に浮かぶ ラグナは、腰に穿いた剣へ手を伸ばしその存在を確かめる 「確かに、その通りみたいだな」 敵と成り得る自分以外の生き物が居ない世界では、争いも何もかもが永遠に起きる事はない その意味ではこの世界は平穏と言える けれど、ここは人が生きる事の出来る世界では無いのだから 真実の意味で、平穏が訪れる事は無い 何も知らないまま、この世界で過ごす事も この世界に取り込まれる事も 「俺はごめんだけどな」 小さな呟きが不自然な程辺りに響く ラグナは、都の中央に見える館を目指し歩き始める どっちにしろ、手がかりなんてもんは偉い奴が持ってるもんさ 歩き出した足に触れた瓦礫が音もなく崩れ去る 手に触れた刀身から微かな震えが伝わる 終わる事の出来ない世界か ほんのりと、剣が熱を帯びる 何処からとも無く生じた光が強くなるにつれ、世界がぼやける 朽ち果てた世界を覆い隠すように現れる、美しい石畳 石造りの壮美な建物 外から見た幻そのままの光景 遙か遠い失われた過去の姿 ラグナの目に二重映しの世界が現れる 遠い昔の楽園 歩き初めのラグナの周囲で、幻影が動き出す 流れ出す時間 突如破られる平穏な光景 空から現れるモンスター達の群れ 逃げまどう人々の姿 やけにリアルな幻は、真っ直ぐに歩みを進めるラグナをすり抜けていく この世界に染み込んだ記憶 歩みを進めるその脇で、モンスターに襲われる人々が映し出される 助けようと動きかける身体を押さえる これは過去の物語 覆される事のない記憶の再生 空が陰る 遠く隔てられた空をG.F.が過ぎった |