(戦い SideL)
上空に現れる巨大な幻 ぶつかり合う二つの巨大な力 二種の異界の生き物、G.F.とモンスター達の戦い 身を削り繰り広げられる戦いの様子 遙か上空に映し出された光景から目を離し、ラグナは微かな音が聞こえる方へと足を進める 上空の戦いの震動によって音も立てず崩れていく、世界 頭上から降り注ぐのは、かつての巨石、砂の粒 降り注ぐ砂に、目を細め 崩れ残った建物の角を回る 不意に開ける視界 かつて辺り一面に裂いていた筈の花々は、枯れ果てた茶色の姿を晒す その中心に、欠けた噴水と空を見上げる女性の後ろ姿 触れた花びらが砕け散る 足を踏み出すたびに、辺りに広がるもの悲しい音色 背を向けていた彼女がゆっくりとこちらを振り返る いつか見た夢のなかの登場人物 遙か遠い昔の……… 酷くゆっくりした仕草で、身体の向きを変える 何の感情も伺えない、静かな眼差しがラグナを見つめる 踏み出される足に白いドレスがまとわりつく 上空から吹き下ろす風が、2人の間を駆け抜けていく 瞬きもせず、一心に見つめる瞳 「―――――」 微かに動く唇 聞こえない言葉にラグナは僅かに目を伏せる この地に流れた気の遠くなるような長い年月 世界を覆う、滅びの気配 滅びの気配を色濃く残したまま、不自然に存在し続けてしまった場所 感情の伺えない瞳が臥せられ、前方に差し出された彼女の手の中に、一振りの錫杖が現れ出る 祈りを捧げる様に、両手に掲げられた錫杖が辺りに鋭い鈴の音を響かせる 開かれた瞳 右手に握られた錫杖が、突き出すように構えられる 止めていた足を動かし、彼女の元へと歩み寄る それじゃあ 「はじめるか」 言葉と同時に腰に履いていた剣を抜き放つ 彼女の左手が添えられた錫杖がその形状を変える 先端に出現する鋭い刃 「ええ、今度こそ………」 喉の奥に吸い込まれる言葉 無意識の内に身体が攻撃の構えをつくる これから始まる真剣勝負 身体に染み込んでいる、戦いの為の技術 牽制をする迄もなく、お互いの間に張られた見えない糸が限界まで張りつめている 見かけにだまされたりはしないさ 重くのし掛かってくる緊張感 デスサイズを構えた彼女からは、濃厚な死の匂いがする 空を2体の生き物が覆い、降り注いでいた柔らかな光が遮られる 暗く重苦しい雰囲気はお誂え向きってやつだ 自然に大地を踏みしめる足に力が入る 力量のみが勝負の行く末を決める お互いの為にも、ここで負ける訳には行かないよな ま、例え俺がダメだとしても…………… 脳裏を過ぎる存在に、自然と笑みが浮かんで来る そーだなこれで全てが終わるって訳じゃ無い、そこまで思い詰める事も無いさ ラグナは、一振りの剣を軽く握り直す 上空で吐き出された炎が、世界を赤く焦がす 光を受け赤く煌めく刀身 残されている不思議の力 愛情と罪の欠片 今なお後悔の念に苛まれる、遙か遠い昔の契約 ラグナへと鋭く振り下ろされる切っ先 子供の頭身ほどの刃が届くよりも手前で、強く地面を踏み込む 強く蹴りつけた足下で、花々が悲鳴を上げ砕け散る 飛び越えた彼女の背後、身体を反転させ、流され掛ける身体を強引に止める 空振りしたデスサイズが地面へと激突する寸前ぴたりと停止する 絶妙のタイミングで繰り出した攻撃は、身を翻し後方へと大きく飛び去った彼女に交わされる 場所を入れ替え、再び動きを止める 先ほどの激しさが幻であるかの様に訪れる静寂 お互いに武器を構えたまま動かない 相対する彼の瞳に見え隠れするのは…… どことなくぼやけた光を放つ黄昏の世界 暗い空間で、ラグナの持つ剣が蒼い光を放った |