英雄と幻影
(真実)


 
優しく触れた手のぬくもり
守ろうとする心
癒そうとする想いが傷ついた身体を癒した
彼は感謝の気持ちを込めて姫君達へと贈り物を贈った
姫君へは、揺るぐ事のない強大な守護の力を
彼と彼女へは姫を守る事が出来る程の戦いの力を
それは純粋な感謝の気持ち
好意と好意が結びついた結果
けれど……
初めての触れ合いだったが故に起こった悲劇

「強すぎる力は毒になる」
感情を押し殺し淡々と告げられた言葉
人にはあり得ない力を持ってしまった事の悲劇
そして、強く濃厚な気配は魔物達の注目を浴びた
「魔物は、強いモノを倒す事によってより強い力を得る事が出来るそうだ」
強大な力を持った非力な存在
G.F.が“落ちた”空から凶悪なモンスターが姿を現すのにそう時間は掛からなかった
モンスターは、獲物と定めたモノ以外のモノでも襲う
逃れる手段は、ただ倒す事
「平和は失われた」
戦う手段を持たない者
大切な者を守ろうとする者
様々な人が命を落とした
事態に気付いたG.F.は人々を守る為に力を振るった
けれど……
「モンスターが現れる事に変わりはない」
そして、獲物と定められた相手が変わる訳でもない
もちろん、ソレを回避するための様々な手だては考えられた
だが、結論を待つだけの時間が足りない
「焦っていたためか、再び間違いが起こった」
二度と、取り返しの付かない間違い
姫のたっての願いもあり、取り急ぎ安全な場所へ
私達G.F.が棲む異界へ、移動しようと空間を開いた
幾度かの行き来で慣れていた行為、いつもと同じ感覚
それが……
「辿り着くはずの世界に、彼女達は現れなかった」
人もG.F.も皆、彼女達の行き先を探した
行方が判らないまま、長い月日が流れ
辿り着いた結論は
この世界の何処にも存在しない場所
“界の間に捕らえられた”という事
存在しない場所にたどり着く事は出来ない
等しく絶望の文字が脳裏を過ぎった
だが……
「幻が現れた」
彼女達が暮らしていた都と全く同じ都
それはただの幻影では終わらず
丁度、本物の都の対岸で実体と化した
助けに踏み込んだ人々が見たのは非情な現実
G.F.の身体は拒まれ
名乗りを上げた人々は、解放する手段を持ち得なかった
偶然と、必然
様々な要素が絡まり合ってできあがった力の檻
救い出す手段を見いだせぬうちに、再び幻と化し消えていった

絶望と希望
世界が交わるたびに込められた願い
けれど、幻が現れる迄の時間はあまりにも長く
そして、この世界に留まる期間はあまりにも短く
あまりにも長い歳月が立ち、彼女を知る者は一人も居なくなり
人は彼の存在を忘れてしまった
そして気付く、人が生きる時間を遥かに超えて存在する彼女達は、すでに人では無くなっていると
それからさらに歳月が経ち
ようやく知る事の出来た彼女達の望みは……
 

 
 
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