(戦い SideS)
いつ現れるとも知れない敵の存在 鞘の消えた抜き身の刃 ガンブレードの重さに馴染んだ手には 軽々と片手で扱う事の出来る刀身はどこか頼りなく感じてしまう 握りしめた掌が脈打つ感触を伝えてくる 緊張しているのか? それとも……… 考えるよりも早く身体が反応し剣を振り下ろされる 崩れ落ちた建物の影から現れた異形の獣が、宙に解けていく 触れた側から砂へと姿を変える石壁 空に浮かぶG.F.の羽ばたきで、吹き飛んでいく家屋の姿 繰り返される幻影 辺り一面にはびこる“死”の気配 歩き続けるスコールの耳に、何者かの足音が聞こえる 一振りの剣を片手に、静かに立ちつくす人影 手の中の剣を引き寄せ、人影へと歩みを進める 上空で吐き出された炎が、世界を赤く焦がす 意識せずとも反応する身体 光を受け赤く煌めく刀身 なんの合図もなしに、唐突に始まる真剣勝負 強く蹴りつけた大地が砂を舞い上げる 二種の金属が激突し、辺りに火花を飛び散らせる 遅れて響く鈍い音 すれ違い場所を入れ替え、改めて対峙する 正眼に構えられた剣先 先ほどの出来事が幻であるかの様に訪れる静寂 お互いの間に張られた見えない糸が限界まで張りつめている 重くのし掛かってくる緊張感 足の下でかつての石畳が軋んでいる この地に流れた気の遠くなるような長い年月 スコールは、両手を添え剣を構える 負ける訳には行かない 強い想いに反応するかの様に、鋼が微かな音を立てる 音に引き寄せられる様に踏み出される足 動きが目に入ると同時にスコールは左側へと身体を移動する 空を切った剣が風を起こす 繰り出した剣が寸前の所で避けられる 後方へと下がり、振り上げられた剣を受け止める 合わされた剣から、強く突き上げる力が伝わる ぎりぎりと音を立てる鋼 スコールが持つ鋭く薄い刃は欠けることなく力の均衡に耐えている 瞬間、相手の力が緩む 崩れた均衡に、入れたままの力の勢いのまま、スコールの腕が勢いよく振り下ろされる 危険を感じ、無理矢理振り払った切っ先の向こう、遙か前方へと移動している 「……その剣は……」 細い声の囁き そして、突き刺さるような視線が注がれた |