英雄と人形
(遭遇 SideL)


 
エスタ北東部、森林地帯へと続く道筋
長い間未踏の地として存在していたその場所へと調査隊の車がゆっくりと進んでいる
彼等の目的地は、かつて発見されたG.F.の神殿
数々の危険が排除された今、その場所までの道筋はともかく、神殿自体はさほど危険な所では無くなっている
とは言ってもモンスターの危険性は相変わらずある為
『危険なモンスターが現れたら、すぐに引き返す事』
という条件の下に、専属の兵士と雇った護衛に護られての行程になる
運が良かったのか、モンスターの姿を見る事も無く真新しい道を順調に進んでいく
「何事も無ければ、もう少しで目的地に到着です」
時間を気にする彼等へ声を掛けると同時に聞こえた音に護衛達が辺りの様子を伺う中、2人の兵士は車両に装備された機械を覗き込んだ
幾度か続く銃声
遠くない場所で聞こえる戦いの音
聞こえてくる音や声から判断するに大規模な戦闘が行われている様だ
機械が戦闘が行われている位置をはじき出す
機械の作動音が高く響く
そして、ざらついた画面に徐々に表示されるその地点の映像
モンスターを取り囲んだ、十数人の人間の姿
彼等は充分な武装をしていて、大凡迷い込んだ一般人や、何かの弾みで巻き込まれた学者には見えない
「この辺りでの討伐作戦の報告は受けてるか?」
「いや、そう言う話は聞いて無いが?」
エスタ国内で、モンスターの討伐が行われ場合、規模の大小を問わず、人々の安全の確保を目的として必ず通達がされる
「戦いの様子はどうなんだ?」
状況を見る事が出来ない依頼者達が兵士へと質問を投げかける
素早く視線を交わし
「どうやら、訓練に来た戦士達がモンスターに遭遇しただけの様だ、こちらはこのまま進もう」
接触をさりげなく回避する
聞こえてくる音に不安そうにしながらも、何処か安心したように、依頼者達が目的地へ向けて移動を開始する
画面に映し出された光景は、依然激しい戦闘を伝えてきている
「緊急事態には見えないな」
例外として辺境にある、村や町の付近なら、緊急的にモンスターとの戦いが繰り広げられる事もある
ここは確かに、学術調査値となっている神殿跡からは近い位置にあるが、緊急戦闘を行う必要がある場所では無い
それに、映し出された映像は、どう見ても自分達の同僚では無い
「またどっかの奴等が訓練にでも来てるのか?」
時折武者修行に訪れるガーデン生や休暇中のSeeDが居る事はひっそりと有名になっている
「それだったらこんなに人数は居ないだろ」
訓練に来るのは1人から数人単位
あれほどの集団になる事は決して無い
もしも、大規模な集団になるとするならば、やはり通達が在る筈だ
依然として派手に続く戦闘
「連絡を忘れていた、なんて事は無いよな」
映像を保存し、状況を簡単にまとめ上げる
「どっちにしろ報告はしなければらないし、問い合わせて見るか」
彼等の報告を始まりに、しばらくの間日を置いて各地で同じ様な報告が寄せられる様になった
 
 
 
 
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