英雄と人形
(調査 SideS)


 
眼の前には、依頼人に対する報告書が並べられている
依頼書に記載された名前を元に探した幾つかの情報は、余り歓迎出来ない結果を知らせている
曰く、権力に対する執着
曰く、妄信的な理論
曰く、モンスターに対する異常な興味
曰く、自己に対する過大な評価
彼を知る人からは、良く無い話ばかりが出てくる
研究に溺れ、自分の理論を証明する為だけに何度も常軌を逸した実験を繰り返し、結局は追放された狂信的な科学者
まとめ上げられた報告書に書かれた一文
深い所まで踏み込んで調査した訳では無い為、実質的な所は解らないが、大筋の所では間違いは無さそうだ
危険人物だな
この人物に対する対応を今後どうするかはまだ分からないとしても、今回の依頼を含め、今後とも依頼は受けない方が良さそうだ
データベース内に、要注意人物として、人物データを登録しておく
「それと、そこには書いて無いけど、気になる噂も聞いて来たよ」
報告書を読み終える迄待っていたらしいアーヴァインが口を開く
「どうも最近、良くない奴等と接触してるみたいだね」
軽く肩を竦め
「まあ、話を聞いたのは、面白味も無い真面目な科学者さんだから、どれくらい良くないのか分からないけどさ」
確実な情報では無い事を付け加える
「他に気になる事があるのか?」
わざわざ意味ありげに言い出すのは、きっと何かあるはずだ
「兵士らしい人間の目撃情報」
ただ兵士を見かけたという事なら別に気になる程の事じゃない
「それがどうも集団でモンスターと戦ってたって言うんだよね」
……モンスター?
「兵士がモンスター討伐に出るのは、訓練も兼ねた仕事としてある事だし、当たり前の事って言えば当たり前の事なんだけどね、ちょっと気になるんだよ」
依頼された内容はモンスターの捕獲、関連性を疑わない人間は居ない
「念のため現場を見てきたけど、それ以降場所を変えたのか現れないみたいで詳しい事は不明」
訓練が終わったから、現れないのか
それとも、人目に触れたために現れなくなったのか
どちらの理由が原因なのかによって状況は大きく変わってくる
「ついでに言えば、その前後から姿が見えなくなったみたいだけど」
科学者本人からは数日前、連絡場所の変更の申し出が届いたばかり
「関連が在りそうだな」
科学者が姿を消したのは、モンスターを捕獲する手段を手に入れたから
再び連絡してきたのは………
もう少し背後関係を調べた方が良さそうだ
細かい情報を確認しようとしたその時、エスタから連絡が入った
 
 
 
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