(楯)
音もなく扉が開く 出迎える様に並んだモンスターの姿も今の私の気分を高揚させる事が出来ない それもこれも、すぐ後ろまで迫ってきた侵入者のせいだ 駆け込んだ部屋の奥で、偉大な実験を続けていた人形が振り返る 相変わらず感情の無い瞳 実験の手を止めたその視線が、私の背後へと向けられる 釣られてふりむいた私の目が、2人の男の姿を捕らえた 実験の邪魔をする侵入者達 ようやく目的が達成されようとしているこの時に、何故私の邪魔をするのかっ 久しぶりに私に怒りの感情が甦る 一刻も早く、この者達を排除し、研究を続けなければならない 「何の御用でしょうか?」 決意をかためた私の耳に、平坦な声が聞こえる 主人である私への問いかけだ そうだ 「実験の邪魔をする侵入者だ」 こいつを使えば良い コレは主人である私の言う事を聞くのだから 大した事は出来ないだろうが、モンスターを封じ込めるだけの力と丈夫さはある 「邪魔が出来ないよう、研究所から追い出せ」 私が、あの装置を起動する迄の間 その短い時間、足止めが出来れば良い 「了承致しました」 ゆっくりとした足取りで、男達へと近づいていく 「施設から退去をして下さるようお願いします」 そんな言葉で立ち去る様ならばそんな事を命じはしないというのに、無機質的な声が退去を促す 後の事は人形に任せ、私は奧の施設を目指す 「ご待機下さい」 先ほどよりも強く響いた声 やはり言葉を聞くことなく、私を追おうとしている 「聞き入れて貰えないのなら、実力行使に訴えさせていただきます」 走り出した私の背後でそんな言葉が聞こえてきた 初めからそうすれば良いものを…… 何か重いモノが投げ出される様な音が聞こえた 「ここは任せろ」 忌々しい言葉が私を追ってくる どうやら人形には、たかが2人の足を止める事も出来ないらしい 「役立たずめ」 再び背後から足音が近づいてくる あれがある場所まではもう少し 後少しの辛抱だ |