英雄と魔法生物
(報告 SideL)


 
―――エスタ会議室―――
集められた人々の前に並べられた資料
映像を含めた状況説明が進められている
書かれた言葉と語られる言葉の数々
そんな自然現象、あるわけねーだろ
ほんの少し報告を聞いただけで明確に解る事にラグナは眉をしかめる
数々の証言を繋ぎ合わせて導き出される結果
直前までの天候がどんな物であろうとも突如嵐が起きるなんていうのは、どう考えてもあり得ない
しかもそれがある一定の区間のみで発生している
おまけに、まるで線で引いたかの様に、嵐の領域と通常の天候の領域の境が存在するなんていうのは、どう都合良く考えた所で、自然現象には成り得ない
会議室の中には何とも言えない静寂が広がっている
あからさま過ぎる不自然さに気付いていない者は居ない
「とりあえず調査続行、だな」
どう見てもおかしな現象で何者かの作為を感じるが、まだ詳しい事は解らない
「………そうですね」
もう少し詳しい事が判明しないと現実的な方針を打ち出す事は出来ない
「警戒するように通達だけは出しておこう」
今現在出来る事はそれ位だ
警告を発すると同時に警戒を固め情報を集める
今出来る事、手を打つべき事はそれくらいだ
それくらいなんだけどな、どうも嫌な感じがするぜ
天候を操る術と言えば、なんらかの装置か魔法
大がかりな(だろう)装置を作るだけの科学力を持っているのは今の所エスタ以外では無い
少し、調べて見るか

情報が集まる
エスタ海域のみではなく、全世界で起きている同じ現象
日を重ねる毎に増えていく目撃者
次第に増えていく情報の中にいくつか共通するモノが現れ始める
有るはずのない島の存在
あり得る筈のない嵐に巻き込まれた人々の話
巨大なモンスター
嵐を引き起こしたのはモンスターの魔法
情報が集まるにつれ海が荒れる原因は魔法によるものとの見解が強くなった
―――現時点で疑問も残っているが、モンスター討伐を実行したい
数日後軍部から報告書が上がってきた

仄かな灯りの灯る薄暗い部屋
書庫を思わせる石造りの部屋の片隅に置かれた小さな机
乱雑に散らかった机の傍らに古い書物を置き、ラグナは地図を広げ考えこむ
手元にある幾つかの情報
様々な目撃情報の中に共通項
“島”か………
あるはずの無い場所で見かける“島”の存在
海を進む巨大なモンスターの姿
そして、現象との遭遇位置、目撃位置
地図に散らばったマーキングの数々
―――可能性は否定できねぇよな
見つけ出した書物に書かれた“記録”が意味する事
それとは別に、昔語りに聞いた遠い過去の出来事
どっちが本当かは解らないが、双方に描かれた“島”の存在は無視出来ない
ばらばらに見える地図の上、一カ所だけ同じ色のマークが固まっていた

そして数日後、バラムガーデンから連絡が入った 
 

 
 
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