英雄と魔法生物
(会議 SideS)


 
エスタの会議室
顔を揃えているのは、エスタの高官達とSeeD
中央に置かれたテーブルの上には、目撃証言や調査報告書等の資料の数々が置かれている
世界各地で起きている嵐について、エスタの人間が関与していないかどうか探る事を目的に訪れた筈のエスタで、気が付けば問題の現象についての会議が開かれている
テーブルの盤面に世界地図が浮かび上がる
地図上のあちらこちらに色鮮やかな印が浮かび上がる
続いて印の傍に補足事項を記した文字が現れる
丁度その件については調査を進めていたという事だが………
あらかじめエスタ側が持っていた情報の数々
関係が無いという言葉の他に調べ上げた情報が次々と披露されて、相手のペースに巻き込まれたまま、
「新しい情報を加えます」
ガルバディア近海を中心に印が追加されていく
同様に情報の提供を求められていた
追加されたのはバラムガーデン側で調べた情報の数々
「赤い印の方が遭遇情報になります」
地図上に示された赤い光が強調する様に強くなる
「遭遇時刻はこのような順番に」
添えられた日時の通りに点滅していく赤い光
自分達が有していたデータを渡したとのはつい先ほどの事だが、情報はすぐさま処理され追加されている
正直に言えばエスタの情報力や分析力は、状況を把握する為にはこれ以上無いほどに有益だ
嵐との遭遇情報を現す赤い光はあちらこちらに飛びながら場所を移動していく
効率としては余り良くはないが、コレが連続した動きという証拠は無い
人の仕業ならばそれこそ、1つのデータを取った後に拠点に戻っている可能性もある
「モンスターや、モンスターと思われるもの等の目撃情報はこちらの2色で………」
赤い光が弱くなり、黄色と紫の2つの色が浮かび上がる
補足事項を説明する声と共に点灯されていく小さな光
惜しみなく提供される情報
ガーデン独自の力ではこれだけの事を調べ上げるにはもうしばらくは時間が掛かる
その情報が手に入るのは助かるが、今回の件の依頼者はエスタではない
本当なら、こんなにあっさりと情報を出すべきじゃない
「先ほどの遭遇情報を含めた目撃時刻はこのように………」
地図の上に流れる様に光が灯されていく
光と共に添えられていく日付と時刻
光の残像で繋がれた線は確かに綺麗に結ばれていく
表示されている情報に間違いが無いのならば、不可解な動きをしている事は確かだが、同一の存在が事を起こしていると判断して間違い無い
普通、これほど非効率的な動きを人はやらない
確認はとれていない上に少数意見として上がっていた情報
―――嵐の中心にモンスターが居たという報告
情報が真実だとする確率が高くなる
その方向を優先的に探るべきかもしれない
方針を固めているスコールの目の前で不意に地図が消える
「ここで一つ重要な情報が有ります」
人々が注目するのを待つように言葉を切り、重々しく口を開く
「先ほどの目撃情報の一つですが………」
浮かび上がる海の光景
激しく降る雨や、激しい波の様子は嵐の光景に見える
「撮影画像か?」
画面の中に見え隠れする人の姿
映像は海面を追っていく
「ここからです」
映像が拡大される
荒く中央に表示された、島
“島”がゆっくりと移動する
そして――
「モンスター!?」
急激に浮上し海面へと姿を見せた巨大なモンスター
証言の中には確かに島が動いているというものもあった
報告を見た限り見間違いだろうという判断がされていたが
確かに見間違いには違いないな
モンスターと島の2つがこんな形で繋がるとは思ってもいなかった
「モンスターが島の正体って、訳か」
冷静な呟きが耳に聞こえる
映像が消え、再び地図が表示される
3色の点をゆっくりと線が結んでいく
情報が分析され次々と解説が施されていく
説明を聞きながら、ふと会議の場が変に静かな気がした
自分達SeeD側が静かなのは珍しくはあるが、重要な情報が話されているこの状況では変な事ではない
違和感を感じるのは………
スコールはゆっくりと視線を巡らせる
注目してみれば、会議に身の入っていない様子でラグナが映像を見つめていた
 
 
 
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