英雄と魔法生物
(島 SideL)


 
ある筈のない場所に島の姿が見える
たいして大きくは無いが、ラグナの乗った飛空船の3台くらいは余裕で停める事が出来る
島の中央には巨大な岩
その他には何も無い、草木も生えていないただの真っ平らな地面
ラグナは小島の上へ着陸する
大きさは違うが、モンスターの姿に何処か似ているかもしれない光景
嵐の中の混乱の中なら見間違えたとしても仕方が無い
飛空船を降りると足早に巨石の元へと足を進める
地図に示されていた水中に沈む島の存在
『水中の島は厄災と共に海面へと姿を現す』
昔聞いた言葉
古い書物に書かれていた小島ごと封印された“魔物”の話
真実と虚実が混ざり合い生まれた昔話
発見した書物の内容が真実を語っている訳では無い、が………
巨石の前で足を止め、その表面に目を走らせる
目で見た限りではおかしな所は無いただの岩
短剣を目の高さまで持ち上げ、鞘から半ば引き出す
頭を締め付ける様な甲高い音が響く
不快な音に歪んだ視界に、巨石の表面に四角い切れ込みが出現するのが見えた
音が止み、短剣が微かな光を灯す
呼答するかの様に漏れ出る光
一拍ほどの時間を置き、音も立てずに扉が開く
「どうやら当たりって事か」
ラグナは短剣を懐に仕舞い、剣を握りしめ扉の中へと入り込んだ

したたり落ちる水の音が聞こえる
1本道の長い洞窟が続いている
生き物の気配は感じない
機械の音も耳には聞こえない
ただ左右の壁が仄明るく通路を照らしている
強くは無いが、充分過ぎる明かりの中をラグナは足早に進んで行く
今の所敵が襲ってくる様子は無い
封印を施す際、モンスターの類は一掃されていると言えばその通りかも知れないが
今、海で事件を起こしているのは、その廃棄された筈の1匹
スコール達が相手をしているモンスターがここに居るはずのモノなら、1匹や2匹他の生き残りが居てもおかしくはない
………その可能性が低い事は知っている、だが何かの弾みって言うこともある
“封印”したと書かれていた魔物の話
残された資料、言葉から知ることの出来る遙か昔の真実
もしかしたら、この間の事件の様に誰かが封印を解いてしまったのかも知れない
「それはちょっとな………」
あり得ない筈の空想に小さな苦笑が浮かぶ
特殊な環境、特殊な条件
“偶然”なんていう事はきっと無い
無いはずだが………
………急ぐか
辺りを警戒しながらも、ラグナは通路を走り出した 

 
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