英雄と魔法生物
(海上 SideS)


 
穏やかな海が続いている
目的のモンスターの姿もモンスターが発生させているはずの嵐も見当たらない
世界各地で起こっている現象
行き当たりばったりでは、そう上手く遭遇出来るはずも無い
船室の机の上に広げられた地図
エスタの会議室で映し出されていたモノをそっくり紙に写して貰ったものだから情報は正確な筈だ
数々の目撃情報を元にモンスターとの遭遇率が高い場所を推測する
南半球、島も何もない広い海上
障害物が無いからなのか、比較的この付近の領域での目撃情報が多い様な感じがする
最後に確認されたのは遠く離れた場所になるが、今での移動速度から考えてもこの地点で発見出来る確率は低くは無い筈だ
世界各地を廻っているのならば、少し待てば現れる可能性もある
決められた方針を元に船が海上を進む
スコール達モンスター討伐の実行要員を乗せた船の他に、数隻船と潜水艇が徘徊地を巡っている
確実に此処に行けば良いというものは無いが、可能性の高い場所に待機し他の地点で発見されたら情報を貰えば良い
時折、探査ポイントについた船から情報が入る
海上を見渡す限り、嵐が吹き荒れている様子は無い
同様に近くを行く水中の潜水艇からもモンスターの姿が見えるという報告は無い
持久戦になるかもしれない
探査範囲が広すぎる、かといって、目撃譲歩を入手してから現場へ向かったのでは間に合わない
―――目撃した船にモンスターの位置を逐一報告して貰えば………
その方法も考えたが、今までモンスターが船を襲った事が無いとは言え、これからも襲わないという保証は無い
保証が無い以上、そんな危険は犯せない
モンスター自身が手を出さなくても、付随する嵐の影響で沈む可能性も無視出来ない
海は穏やかに晴れ渡っている
目的の地域までは後少し
海中の潜水艇から通信が入った

船が高波に揺れる
嵐が巻き起こる
一瞬にして暗くなる視界
船を乗り入れたとたんに一変する辺りの様子
上空から激しい雨粒が叩き付ける
空を光る雷に、辺りが強く照らし出される
報告書に記されていたものと全く同じ現象
船員達が必死で舵に取り付いている
荒れ狂う海の姿、けれど少し先では晴れ渡った空が見える
船の上からは、モンスターの姿は見えない
この嵐は目撃されたモンスターと無関係である可能性も僅かながら残ってはいるが………
推測が正しければモンスターの姿は必ず近くにある
どちらにしろ、これは自然現象ではあり得ないし、何者かの実験という可能性も低そうだ
荒れ狂う海の上から海中のモンスターの姿を発見するのは困難だろう
近くを航行中の潜水艇からの報告はまだ無い
巨大なモンスターの姿を実際に見たという人の数はそれほど多くはない
だが、撮影されていた映像は、それ自体が幻でも無い限り、モンスターが実際に存在する事を示している
「モンスター発見しましたっ」
不意に飛び込んで来る報告
海中を行く潜水艇からの連絡
「このままモンスターへと攻撃を開始するとの事です」
「解った」
決して攻撃を仕掛けてこないモンスターの事など、気になる事は多少ある
だが、突然発生する嵐はやがて事故へと繋がっていく
そして、モンスターはその存在がモンスターである限り、いつ人襲うか解らない
依頼内容も嵐の排除、モンスターの討伐と目的を変えている
「まずはモンスターの討伐だ」
何かすっきりとしない感情を抱えながら、スコールは甲板へとモンスターを迎え撃つため甲板へと急いだ
 

 
 
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