英雄と魔法生物
(決戦 SideL)
目の前で魔法が散っていく
次々と尽きる事無く繰り出される魔法の数々
様々な種類の魔法
ラグナは攻撃を受け止め―――時折避けながら―――滑りを帯びた身体へと剣を降ろす
じわじわと傷ついていく身体
回復をする必要は無いと思っているのか回復はできないのか
傷口が確実に広がっていく
こんな事を繰り返していても仕方無いんだがな
魔力が尽きる様子も無く次々と発動される魔法
繰り出される魔法の中には、見たことのないものや昔に滅んだもの等様々な魔法がある
「………少しは休ませて欲しいぜ」
世に言う魔法の法則を無視して繰り出される攻撃は、巨大な倉庫から探してきた腕輪のお陰で身体に触れるよりも早く消え、相手と同様大したダメージは受けていない
それは良いんだけどな
一つ困った事に
左手に有る短刀が熱を帯びている
こっちが手を打つ暇が無いんだよな
僅かでも動きを止めようと振るう剣は役に立たない
やっぱ別の手を考えた方が良かったかもな
距離を置き形状の変わった武器が弧を描くように襲いかかった
力を込めた右腕との間に強く張られた銀の輝き
脇腹に刃が突き刺さり、身体に鎖が絡みつく
力を込める毎に、偶然突き刺さった刃は深く食い込んでいく
口元から漏れる苦痛の声
「………何故だ?」
“魔物”の口から言葉が零れる
「何故、魔法が効かない?」
手元に刃を呼び戻す
「何故だろうな」
ラグナの口元がほん僅かに歪む
左手の短剣から小さく起こる放電
魔法を遮断する力、魔力を吸収する力
耳に小さな火花が飛び散る音が聞こえている
見せつける様に差し出した短剣の様子は、見たく無くても目に入るだろう
そろそろ限界だ
膨れあがった魔力が放出される事を待っている
ゆっくりと影が近づいてくる
人と似た人ではない存在
魔力によって作られた生き物
姿を見つめながら、ラグナはゆっくりと両手を動かす
左手の短剣、右手の剣
剣に仕込まれた仕掛け、短剣に秘められた力
左の短剣を右手の剣へと重ねる
辺りに響く金属音、型にはめる様に剣の中へと収まっていく
スイッチが入ったように剣にまといつく魔力の輝き
剣の表面に浮かび上がる文字
「それは―――」
剣を、文字を見つめ立ちつくす姿
力に反応するかの様に、四方を囲む壁に光が走る
電源が入る音が聞こえる
次々と連続して起動していく装置
「………滅ぼしに来たか」
「そうだ」
保留にされ、放置され、忘れ去られていた研究
遙か昔の決断、決定
それを今の時代にそのまま持ち込むことは出来ない
敵―――管理者―――が背を向ける
「ならば仕方がない」
悪いな、今の世の中じゃ争いの種にしかならないんだ
「――――」
振るい落とした剣はあっさりと背を向けた身体を裂いた
次へ そのころのスコール
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